高校野球(硬式野球)の全国大会と聞いて真っ先に思い浮かべるのは春と夏の甲子園大会という方は野球ファンならずとも多いでしょう。実際には高校野球の全国大会の種類は4大会あり、これらはいずれも公式戦ですが、この4大会以外にも公式戦はあります。
これらの公式戦と全国大会は密接につながっているものの全国大会のない公式戦もあります。全国大会と公式戦との違いとは?高校野球の公式戦、全国大会の年間スケジュールってどうなっているのか?解説したいと思います。
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高校野球全国大会の種類は?
高校野球の全国大会は、選抜高等学校野球野球大会(春の甲子園)、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)、国民体育大会(国体)、明治神宮野球大会の4大会があります。
このうち予選があるのは夏の甲子園、全国高等学校野球選手権大会のみです。これ以外の大会は、地方大会や夏の甲子園の成績によって選考、招待されることになっています。どういうことか?それぞれの大会について見てみましょう。
選抜高等学校野球大会
主催 | 毎日新聞社、日本高等学校野球連盟 |
会場 | 阪神甲子園球場 |
参加校数 | 32校、記念大会は34か36校 |
開催時期 | 3月下旬から4月上旬(春休み期間) |
選考基準 | 秋季地方大会の上位進出校が選抜されやすい |
選抜高校野球の最大の特徴は、前年の秋季大会の各地区大会に上位進出した高校が選抜される一般枠と同じく地区大会や都道府県大会で上位進出した高校のうち一定の基準を満たした高校が選抜される21世紀枠、神宮大会で優勝した高校の地区に1枠与えられる神宮枠があることです。
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一般枠は、北海道、東北、関東、東京、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州の10地区大会でそれぞれ上位進出した高校から選抜されるため、同一都道府県から複数選抜されることも珍しくありません。
例えば、中止になってしまいましたが、第92回選抜高校野球大会の出場決定校のうち、
- 関東大会ベスト優勝の健大高崎とベスト4の桐生一第一は群馬県
- 北信越大会優勝の星稜と準優勝の日本航空石川は石川県
- 近畿大会準優勝大阪桐蔭とベスト4の履正社は大阪府
- 近畿大会優勝の天理とベスト4の智辯学園は奈良県
- 九州大会優勝の明豊と準優勝の大分商業は大分県
- 北海道大会優勝の白樺学園と21世紀枠の帯広農業
と同一都道府県から2校が選抜されました。21世紀枠は一般枠の地域性を考慮しないこともあるので、地区大会の結果次第では一般枠2校、21世紀枠1校の3校が選抜されることもありえます。
このため選抜大会の決勝戦を同一都道府県で争うケースもあり、
- 2017年第89回大会決勝戦は大阪桐蔭と履正社の大阪勢対決、大阪桐蔭優勝
- 1972年第44回大会決勝戦は日大桜丘と日大三の東京都対決、日大桜丘優勝
- 1948年第20回大会決勝戦は京都一商と京都二商の京都府対決、京都一商優勝
- 1941年第18回大会決勝戦は東邦商業と一宮の愛知県対決、東邦商業優勝
- 1938年第15回大会決勝戦は中京商業と東邦商業の愛知県対決、中京商業優勝
の5例あります。現在では同一都道府県勢は決勝戦まで当たらないように組み合わせされますが、戦前などかつては同一都道府県から3校、4校選抜された時代は決勝戦以外で対決することもありました。
地区大会の上位進出校が選抜されることと基本的に選抜されるのが32校なので、1校も選抜されない都道府県があるのも選抜大会の特徴です。
全国高等学校野球選手権大会
主催 | 朝日新聞社、日本高等学校野球連盟 |
会場 | 阪神甲子園球場 |
参加校数 | 49校、記念大会は55校 |
開催時期 | 8月上旬から下旬(夏休み期間) |
出場条件 | 各都道府県予選の優勝校 |
高校野球の全国大会で最も有名で注目を集めるのがこの全国高等学校野球選手権大会、夏の甲子園大会です。北海道、東京都はそれぞれ南北、東西に分かれるため47都道府県から49代表校が全国大会の切符を手にします。
最大の特徴は、7月上旬ころから開催される地方予選が全国各地で行われる点と負けたらその時点で終了という点です。選抜大会や神宮大会の出場条件は各地区大会の上位進出校ですので、地区大会での敗戦したりその前段階の都道府県予選で負けても地区大会に出られることもあるため負けてもまだチャンスがあります。
そして3年生の部員は夏の大会で敗戦したら引退、高校野球が終わりとなるため敗戦には涙がつきものです。こういった特徴から夏の甲子園や予選には多くの人気や注目度があると言えます。
さらに各都道府県から1校しか出場できないので、北海道、東京以外は同一都道府県の決勝対決はありません。南北北海道、東西東京都の決勝戦はありえますが、実現したことはありません。
また10回ことに開催される記念大会は、第80回大会からは北海道、東京都以外に埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県の7県は東西あるいは南北に分けて予選を行うため1県から2校代表校が出場します。
第80回、90回、100回と記念大会の2校代表校が出場する大会がありましたが、決勝戦まで当たらないよう組み合わせされるため同一都道府県の対戦はなく決勝もありません。
各都道府県から必ず1校出場することから全国の注目を集める大会で、夏休み中の開催ですので観客も全国から集まり応援にも熱がこもります。日本最大のアマチュアのスポーツ大会と言っても過言ではありません。
高校球児は3年生最後となる夏の大会に照準を合わせることになるため4大会の中でも盛り上がり方は突出しています。
国民体育大会
主催 | 日本スポーツ協会、文部科学省、開催地都道府県 |
会場 | 全国の球場で持ち回り開催 |
参加校数 | 12校 |
開催時期 | 9月下旬から10月上旬 |
選考条件 | 直前の夏の甲子園ベスト8を中心に地域性を加味した11校と開催地の代表校 |
国民体育大会は通称「国体」と呼ばれ、高校野球の全国大会としては国民体育大会高等学校野球競技が正式名称です。国民のスポーツ大会の一競技という位置づけで主催も高野連ではありません。
選考条件は、直前の夏の甲子園のベスト8校を中心に3回戦進出した高校の中から11校が選考されます。1都道府県1校となるべく全国から選考するという傾向から全国の各地区から満遍なく選考されるように調整されます。さらに国体の開催都道府県の代表校は無条件で選考されます。
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開催期間は数日間で、限られた開催期間で優勝校を決めるためかつては大会途中で打ち切られることもあり、複数校が同時優勝という扱いや優勝校がない年もあります。
さらに3年生にとってはご褒美のような意味合いもあるため、春、夏の甲子園や神宮大会に比べて真剣勝負という点では落ちますが、れっきとした公式戦の全国大会で夏の甲子園で活躍した選手も出場することから盛り上がりに欠けるということはありません。
会場も持ち回りで毎年全国各地で開催されるので、運よく近隣の都道府県で開催されることがあれば人気選手や人気校を目当てに観戦に足を運ぶ人も多いです。気候的にも暑すぎず寒すぎずですので、観戦するにはねらい目の全国大会でもあります。
明治神宮野球大会
主催 | 明治神宮、日本学生野球協会 |
会場 | 明治神宮野球上 |
参加校数 | 10校 |
開催時期 | 11月中旬 |
選考条件 | 直前の秋季地区大会優勝校 |
国体同様、主催者は高野連ではなく明治神宮野球場と日本学生野球協会です。神宮大会は大学の部と高校の部があります。予選はありませんが、選抜の選考基準にもなる秋季地区大会の優勝校が招待校として出場します。
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夏の大会が終わり3年生が引退してから新チームとしては最初の全国大会となります。さらに各地区の優勝校が集いますので、翌春の選抜大会に向けて全国レベルの高校と対戦する良い機会となり、出場校は本気で優勝を狙いにきます。
神宮大会で優勝した高校の地区には翌春の選抜大会に1枠与えられる神宮枠も設定されています。選抜を盛り上げるためにも高野連としてこの神宮大会を重視しているといえるでしょう。
春、夏の甲子園と並んで神宮大会は高校野球の三大全国大会と呼ばれることもあります。甲子園と同様にプロ野球も開催される球場であることや東京都で開催されることも大会の権威を高めていえます。
開催時期は秋季大会が終了した11月の中旬の数日間に行われますので、国体同様あっという間に大会は終了してしまいますが、年内最後の全国大会、公式戦ということもあり大学の部と合わせて人気もある大会です。翌春の選抜出場が確実視されている高校が出場するので注目度も高い大会です。
4大会の制覇経験がある高校は?
100回を超える夏の甲子園、90回を超える春の甲子園、70回を超える国体、50回の神宮大会でそれぞれの大会で優勝経験がある高校は7校しかありません。帝京、横浜、報徳学園、早稲田実業、日大三、高松商業、中京大中京の7校です。
このうち一番すごいのは1998年の横浜高校です。他の高校はそれぞれ異なる年度で優勝を達成していますが、この時の横浜高校はあの松坂大輔投手率いるチームで甲子園の春夏連覇を始めなんと4大会を完全制覇しています。このチームは公式戦無敗というまさにレジェンド高校でした。
甲子園の春夏連覇経験がある作新学院、箕島、PL学園、興南、大阪桐蔭も成し遂げていないという点では、国体、神宮の出場機会は少ないものの4大会の制覇経験があるということは名門中の名門である証と言えます。
高校野球の公式戦とは?
高呼野球における公式戦は、主に春季高校野球、全国高等学校野球選手権大会及び地方予選、秋季高校野球、国民体育大会、明治神宮野球大会、選抜高校野球大会が該当します。
公式戦というのは主催者があって公に認められた大会を指しますので、先述した全国大会4大会と各都道府県の高校野球連盟が主催する春季高校野球、秋季高校野球、さらに1年生大会、新人大会なども含まれます。この公式戦での成績は公式記録として記録されます。
ちなみに高校通算本塁打はよく話題になりますが、これは練習試合や招待試合なども含まれますので公式記録とは異なります。
それでは年間スケジュールに沿ってどんな公式戦があるか見ていきましょう。
春季高校野球大会
高校野球部の主な年間スケジュールで言えば、年が明けて最初の公式戦は、3月から4月にかけて開催される選抜高校野球と選抜と並行して開催される春季高校野球になります。
選抜大会は全国から選抜された32校のみが参加しますので、それ以外の大半の高校は春季大会の地区大会からスタートします。まず春休みに入ると参加校数が多い都道府県では市内や近隣地区の高校で1次予選、2次予選などを行います。この予選はリーグ戦で上位校が次のリーグ戦に進むなどして勝ち残り校が絞られます。
参加校数が少ない都道府県ではいきなり都道府県大会もありますが、地区予選リーグで勝ち残った都道府県内の32校や16校で春休み明けの土日などを利用して都道府県大会が開催されます。
なお選抜大会に出場した高校はこの都道府県大会から参加することが多く、選抜帰りですぐに春季大会に参戦することとなります。
この都道府県大会を勝ち進むと上位2校ないし3校が東北、関東、東海、近畿などといったその次の地区大会へ進みます。この春季大会は全国大会にはつながらないためこの地区大会で終わります。
しかしこの都道府県大会で上位に進出すると夏の予選のシード校になるケースもあり、全国大会に直結しない大会ではあるものの各校は公式戦でもあることもあって真剣に勝ちに行きます。
ただ選抜帰りでモチベーションが上がらないまま敗退するようなケースもあり、全国大会に直結する夏の予選や秋季大会に比べると負けてもよいという雰囲気もあり夏への調整という側面もあります。
そのため夏の大会の投手や選手の疲労を考慮して、この春季大会をなくして夏の予選を前倒しで開催すればよいのではないかという意見も聞きますが、春季大会は確かにモチベーションという点では劣るものの全国大会に行けないような高校にとっては大事な公式戦でもあります。
なお春季大会は5月から6月に行われますが、並行してこの期間は各校ともほぼ毎週のように練習試合を行い実戦経験を重ねます。選抜大会で上位進出した高校や名門校は全国各地に招待され招待試合なども行われます。
選抜で好成績を残した高校がこういった招待試合に応じることで夏の大会へ向けて調整が遅れるケースもあり、この時期の過ごし方は各校にとって非常に重要な時期でもあります。
全国高等学校野球選手権大会と地方予選
6月までの調整の時期が過ぎて7月に入るといよいよ夏の甲子園大会への出場権を争う地方予選が始まります。この予選は、全国の高校球児にとってメインの大会となります。甲子園出場へのハードルはかなり高いものの3年生にとっては最後の大会となるため高校球児はみなここに照準を定めます。
この予選は都道府県によって差はあるものの7月の平日に開催することもあります。7月下旬は夏休みに入ることもあり地方予選の日程消化が一気に進みます。この頃からテレビ朝日系列でも「甲子園への道」が毎日放送され、いよいよ夏の甲子園へ向けての各地の熱戦がヒートアップしていきます。
地方予選でも夏の大会は人気が圧倒的に高く、選抜出場校や名門校が登場する試合で土日などに重なると観客数は一気に増え、地方球場のようにスタンドが大きくないところでは外野の芝生席でしか観戦できないようなケースもあります。
プレーする球児や観戦する人にとっても夏の大会は全く位置づけが異なります。高校野球と言えば夏の大会と言われるゆえんはここにあるでしょう。
秋季高校野球大会
秋季高校野球大会は、春季大会と同じような形式で開催されるケースが多いです。激戦区などの参加校数が多い都道府県では夏休みである8月下旬から予選が始まることもあります。
夏の予選で敗退すると3年生が引退、1、2年生の新チームが始動してすぐに秋季大会を迎えることとなります。ただ春季大会と違ってこの秋季大会は重要な意味合いを持ちます。先述したように翌春の選抜高校野球大会に直結するからです。
選抜大会の選考基準では「秋季大会は予選ではない」と明記していますが、事実上秋季大会で勝ち進まないことには選抜されませんし、都道府県大会で敗退した時点で選抜大会の出場はほぼ絶望です。
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このため秋季大会は春季大会に比べると、新チームでの指導ではあるものの翌春の選抜大会へ向けての「ガチンコ」勝負が繰り広げられますし、実際に選手も負ければ悔し涙を流すことも多々あります。
甲子園へ直結するという点では、夏の甲子園予選と翌春の選抜の選考基準となる秋季大会のこの2大会は高校球児にとって最も重要な大会となります。チームの集大成を競う夏の予選と異なり、新チーム始動直後に開催される秋季大会はその後の春、夏の甲子園を占う上でも非常に重要です。
国体、明治神宮野球大会
国体、明治神宮野球大会は全国大会ではありますが、予選というものがあるわけではありません。先述したように国体は夏の甲子園の成績次第、神宮大会は各地区大会の優勝校が招待されるという点で、多くの高校球児にとって出場のハードルも高く公式戦という感覚は薄いでしょう。
それでもこの2大会の存在意義は大きく、4大会制覇ともいわれる大会に位置付けされるだけあって注目度もあります。ただ多くの高校では秋季大会で敗退するため新チームの強化時期として、この秋には新チームでの練習試合や1年生大会といった実戦経験をする時期となります。
この時期に実戦経験を多く積んで、その後の冬を超えてチームとして個人としてレベルアップをはかるためにも欠かせない時期といえます。秋季大会を勝ち進んだチームは選抜されることを目指し、それ以外のチームにとっては夏に照準を合わせます。
国体、神宮大会が過ぎるころには各地区での大会も減っていくんで、新シーズンに向けて各校とも戦力アップのための時間として過ごすことになります。
まとめ
高校野球の全国大会の種類は
- 春の選抜高等学校野球大会
- 夏の全国高等学校野球選手権大会
- 国民体育大会
- 明治神宮野球大会
の4大会があります。これらは高校野球においても公式戦として位置づけられますが、主催者は高野連、日本学生野球協会、日本スポーツ協会など様々です。
高校野球の公式戦は
- 春季高校野球大会
- 夏の全国高等学校野球大会とどの予選
- 秋季高校野球大会
- 国体、明治神宮野球大会
があります。国体、明治神宮野球大会は出場へのハードルが高く、多くの球児にとっては翌春の選抜甲子園に直結する秋季大会と夏の甲子園の予選が照準となります。春季大会は全国大会がなく、どこの高校も公式戦ではあるものの夏の予選のシード権をとる目的以外にはそこまで熱くはなりません。
高校球児にとって春、夏の甲子園がメインであるのは当然ですが、甲子園以外にも全国大会があること、公式戦は全国大会以外にもあることを紹介しました。全国的な盛り上がりという点では甲子園に勝るものはありませんが、1年のスケジュールを通して是非他の公式戦に足を運ぶことをお勧めします!