プロ野球選手になるには、いろんなルートがありますが、基本的には「ドラフト会議」で指名されることです。
ドラフト会議で指名されると一言で言っても非常にハードルが高く、毎年行われるドラフト会議でもアマチュア野球界で実績のある選手、甲子園で活躍した選手が指名を待って結局指名されなかったというのはよくあるシーンです。
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そんなドラフト会議でも、今すぐ即戦力になる可能性は高くはないが、球団として育成選手として契約しておいて上手く育成できれば活躍できるかもしれなという選手を指名する制度が育成制度です。
球団としてもいきなり高い契約金を支払うことはリスクですので、将来性を見込んでまずは育成選手として契約し、支度金という契約金に比べて非常に安い金額と年俸を支払うことで獲得します。
将来性を見込むといってもすでにドラフト会議でも毎年レベルの高い選手が入団し、即戦力もいればこちらでも将来性を見込まれて指名される高校卒の選手もいます。これらの選手に比べても将来性の見込みは低いわけですから競争という点では非常に不利な争いを強いられるでしょう。
それでも育成選手から一流選手に成り上がった選手もいます。有名なところで千賀滉大(ソフトバンク)、山口哲也(ジャイアンツ)、甲斐拓也(ソフトバンク)などもうすっかりプロ野球ファンにもお馴染みの選手が育成出身です。
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ではそもそも育成制度とはどんな制度か?育成選手がどれくらいの年俸、給料なのか?また育成出身で活躍した選手はいるのか見てみましょう。
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育成制度とはどんな制度?
まず育成制度とはどんな制度か簡単にご説明します。
- 元々プロ野球の球団に所属する選手、試合に出られる支配下選手は上限70人(球団合併や解散があった場合は80人)と決められています。これは経済的に余裕のある特定の球団が経済力にものを言わせてドラフト会議を経ずに支配下選手をいたずらに増やすことを阻止するために設けられています。
- 若手選手の育成を目的として「技術向上と社会教育」という理念に基づき支配下登録されていない選手を各球団が保有することを認めたものです。
- 新人のアマチュア選手のみならず支配下登録された選手も育成選手となることで実質の「解雇」ではなく、支配下登録への復帰のチャンスが与えられています。
- 育成選手として獲得するためにも支配下登録されたことのない選手はドラフト会議の2次ドラフトで指名されなければなりません。
- 最低年俸は230万円、新人選手には支度金として標準300万円が支払われます。
- 支配下登録選手と異なり背番号は3桁、出場可能な公式戦は2軍戦に限られます。
要するに一時社会人野球の野球部が廃止されたことへのすそ野拡大への懸念や、特定の球団がかつて球団職員として有望な選手を獲得していたことへの抜け道を防止することを目的に一定のルールを設けて、将来有望な選手を育成するために設けられた制度です。
ドラフト指名されなかった選手と支配下登録までは至らないが、将来性を評価した球団との思惑が一致した制度とも言えます。個人的にも、条件が悪くてもプロの世界に足を踏み入れてそこから這い上がろうという選手に希望と活躍の場を与える制度として賛成です。
またケガなどでいきなり戦力外通告されずにいったん育成選手として出直して次のチャンスを与えるのは、選手本人にとっても良いのではないかと思います。一方で育成から這い上がるのは至難の業です。
まず支配下選手登録されるのもハードルが高いうえに、そこから1軍へ昇格するのはごく一部の選手しかいません。アマチュア時代に輝かしい実績がある選手というよりは、地方に埋もれた選手を発掘するような制度ですのでよほどの努力がないと支配下登録への道すら厳しいのが現状です。
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育成選手はどんな選手生活、待遇なのか?
年俸は230万円ですから、毎月約20万円、そこからもろもろの経費、税金が引かれますから手取りは15~16万円くらいになることが推測されます。ただし彼らは球団の寮に入ることができるので寮費は引かれても住居費、食費は大きな負担とはなりません。
それでも遊ぶほどの経済的自由はありませんから、ひたすら練習するしかない環境に身を置いているということになります。また用具はすべての選手に共通しますが、基本的にボール、ユニフォーム以外は自己負担です。
しかし1軍で活躍するような選手はアドバイザリー契約といってスポーツ用具メーカーから「うちの用具を使ってください」という名目で支給されますが、育成選手はありません。そういう点では用具にかかる費用で年俸は消えてしまうかもしれません。
育成といっても球団もそんなに悠長に待ってくれるわけではありません。1軍で実績があった選手が一時的に育成登録になるケースに比べ、アマチュアから育成指名された選手は3年間である程度の実績を残さないとクビになる過酷な世界です。
それでも独立リーグのように仕事をしながら練習することに比べれば、野球だけに集中できる環境にあるのは恵まれているといえるかもしれません。
年俸230万円でもひたすら昇格することを目指して、寝ても覚めても練習という環境はむしろ上達するには良いでしょう。ドラフト上位で指名された選手よりもハングリー精神は旺盛かもしれません。
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育成選手の待遇や給料は本当にシビアなものですが、上を目指して這い上がるという決意をもって契約している選手たちですから、そこから超一流の選手に成り上がる選手がいるのもうなずけます。その反面クビを切られやすいというのは仕方ないかもしれません、実力の世界ですから厳しいです。
育成から這い上がった選手たち
育成選手から這い上がった選手で1軍でも活躍した代表的な選手を挙げてみました。偶然にもジャイアンツとソフトバンクに偏ってしましまいましたが、育成選手から高額年俸を勝ち取った選手と最高年俸を見てみましょう!
- 山口哲也投手(ジャイアンツ)
2010年育成ドラフト1位、2011年から年俸1億円超、最高年俸2014年~2017年3億2,000万円
- 千賀滉大投手(ソフトバンク)
2010年育成ドラフト4位、2018年から年俸1億円超、最高年俸2022年6億円
2023年からは5年総額7,500万ドル(当時レートで101億円)でメジャーリーグメッツへ移籍
- 西野勇士投手(千葉ロッテ)
2008年育成ドラフト5位、2016年1億円(最高)
- 砂田毅樹投手(横浜DeNA)
2013年育成ドラフト1位、2019年7,200万円(最高)
- 甲斐拓也捕手(ソフトバンク)
2010年育成ドラフト6位、2024年2億1,000万円(最高)
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- 松本哲也外野手(ジャイアンツ)
2006年育成ドラフト3位、2013年、2014年3,200万円(最高)
- 牧原大成内野手(ソフトバンク)
2010年育成ドラフト5位、2024年1億円
- 石川柊太投手(ソフトバンク)
2013年育成ドラフト1位、2020年年俸4,800万円
- 周東佑京(ソフトバンク)
2017年育成ドラフト2位、2024年4,500万円
- 大竹耕太郎(タイガース)
2017年育成ドラフト4位、2024年6,700万円
- 宇田川優希(オリックス)
2020年育成ドラフト3位、2024年4,800万円
3軍制度のあるソフトバンクから這い上がった育成選手が目立ちますが、千賀投手、甲斐捕手、槇原選手は2010年の育成ドラフト同期の当たり年です。また育成出身で活躍した選手には投手が多いのも特徴です。
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まとめ
プロ野球選手でも育成選手制度では相当過酷な条件で契約しますが、これも実力主義の世界。育成選手の待遇、年俸は当然劣悪なものですが、それでも野球に集中できる環境であることはある意味恵まれているのかもしれません。
またそんな過酷な環境から這い上がってきた選手が活躍して高い給料をもらえるようになるのもプロ野球の醍醐味ではないでしょうか?
アマチュアで実績のある選手がドラフトにかかるのは当然ですが、育成から一流選手が輩出されることはスカウトの眼力にもかかっていると思います。
多くの才能のある選手がプロで活躍のチャンスが与えられる育成制度は夢のある世界ではないでしょうか?