プロ野球もシーズン終盤に差し掛かってくると優勝争いも佳境に入ってきます。と同時にクライマックスシリーズの出場をかけた争いも注目を浴びます。現在のプロ野球では、ペナントレースを制覇した後でもクライマックスシリーズを勝ち抜かないと日本シリーズに出場できません。
言い換えればクライマックスシリーズ制度によってペナントレースで優勝できなかったチームでも日本シリーズに出場して、日本シリーズに勝利すれば日本一となることができます。こういった例は下克上とも呼ばれますが、クライマックスシリーズによりペナントレースの優勝争い以外でもプロ野球が盛り上がる一因となっています。
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シーズン終盤にはこのクライマックスシリーズへの出場条件を満たすための指標として各球団のクリンチナンバーが表記されます。クリンチナンバーは優勝マジックナンバーとは似て非なるものです。
ここではクライマックスシリーズ制度の概要と出場条件やクリンチナンバーとはどんな指標なのかを解説したいと思います。早速見ていきましょう!
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クライマックスシリーズってどんな制度?出場条件は?
プロ野球のレギュラーシーズン終了後のプレーオフ制度としてすっかり定着したクライマックスシリーズですが、一体どんな制度なのでしょうか?
クライマックス制度導入の経緯
元々クライマックスシリーズの歴史は新しく、2004年にパリーグで導入された当初は単なるプレーオフ制度で、セリーグで2007年に導入された際にクライマックスシリーズとして制度を変更し現在に至ります。導入の経緯は、リーグ優勝が決定してから日本シリーズまでのいわゆる消化試合を減らすために導入されました。
それまでは優勝球団が決定するとどの球団もモチベーションを維持することが難しく、残されたレギュラーシーズンでは勝敗にこだわることもなく選手個人のタイトル争いのためなら敗戦も辞さないといった単なる試合数の消化に陥っていました。
こういった無駄な試合は観客動員も伸びず、興行面でも盛り上がりに欠く要因となっていました。このような状況はプロ野球界の課題として議論される中、アメリカの大リーグのようなプレーオフ制度を導入することが検討されてきました。
そしていよいよ2004年にパリーグの上位3球団で日本シリーズ出場権を争うプレーオフ制度が導入されます。まずシーズン3位チームと2位チームが対戦し、勝ち残った方がシーズン1位チームと対戦、勝ったほうがリーグ優勝となる制度でした。
このプレーオフ制度では、2004年、2005年ともにシーズン2位チームがプレーオフを勝ち上がったため最終的なリーグ優勝チームとなりました。しかし長いシーズンを勝ち抜いて1位になったチームが、プレーオフという短期決戦で敗退したことをきっかけにシーズン1位の重みを重視するため2006年からは1位チームにアドバンテージの1勝が付与されることになりました。
2007年からはセリーグでも導入、これを機にクライマックスシリーズという名称に変更され、あくまでもシーズン1位チームがリーグ優勝チーム、日本シリーズへの出場権はクライマックスシリーズを勝ち抜いたチームが出場するという制度へ変更されました。
当初はシーズン2位チームと3位チームの対戦を第1ステージ、第1ステージの勝者と1位チームとの対戦を第2ステージと呼んでいましたが、2010年からは第1ステージを「ファーストステージ」、第2ステージを「ファイナルステージ」と名称変更され現在に至っています。
出場条件と各ステージのアドバンテージ、勝ち抜き条件は?
セリーグ、パリーグともにレギュラーシーズンの勝率上位3チームまでがクライマックスシリーズに出場できます。ファーストステージ、ファイナルステージのそれぞれのアドバンテージや勝ち抜き条件は以下の通りです。
ファーストステージ | ファイナルステージ | |
出場条件 | 2位チーム、3位チーム | 1位チーム、ファーストステージ勝者 |
開催地 | 2位チーム本拠地 | 1位チーム本拠地 |
試合数 | 3試合(引き分けも1試合) | 6試合(引き分けも1試合) |
勝ち抜き条件 | 勝利数が多いチーム | 4勝(アドバンテージ1勝を含む) |
アドバンテージ | 勝利数が同じ場合2位チームが勝者 | 1位チーム1勝 勝利数が同じ場合1位チーム |
ファーストステージ、ファイナルステージともに引き分けの場合も1試合とし再試合は行いません。このため引き分けの場合はシーズン上位チームに有利に働くことになります。
ファーストステージでは、シーズン3位チームが勝ち抜くには2勝するか、1勝2分の最低1勝するのが必要条件となります。2位チームは0勝0敗3分、ないし1勝1分なら勝ち抜くことができます。
ファイナルステージでは、シーズン2位ないし3位の下位チームが勝ち抜くには1位チームにアドバンテージの1勝があるため最低2勝するのが必要条件となります。2勝の場合でも1敗も許されず2勝4分(アドバンテージ込み2勝1敗4分)か、3勝の場合でも1敗しか許されず3勝1敗2分(アドバンテージ込み3勝2敗2分)というやや厳しい条件となります。
逆に1位チームは1勝3分、2勝1分ならば残り試合を全敗してもアドバンテージの1勝を含めると勝利数が同じとなるので勝ち抜きが決定します。
また各ステージの本拠地はシーズン上位チームとなっていますが、これは応援が多い、後攻であるなどホームの利ということに加え入場券などの興行収入が本拠地チームに入ることにも配慮されています。
以上のようにクライマックスシリーズでは、シーズン上位チームに有利な条件を付与することでシーズン成績の重みを重視する制度となっています。
クリンチナンバーとは?マジックナンバーとは何が違うの?
クリンチナンバーとはクライマックスシリーズに出場するために必要な勝利数を表します。対してマジックナンバーは優勝の可能性が最も高いマジック点灯対象チーム1チームに必要な勝利数として点灯します。
クライマックスシリーズはリーグの上位3チームが出場するので、クリンチナンバーは通常3チームに対して付与されます。上位3チームに付与されることが多いですが、マジックナンバーと同様に残り試合数が多く自力進出の可能性があれば下位チームに付与されることもあります。
ざっくり行ってしまえばクリンチナンバーもマジックナンバーも点灯の条件については、クリンチナンバーなら対象チーム(主にBクラス)の自力進出、マジックナンバーなら対象チーム(主に2位チーム)の自力優勝がなくなった時点で点灯するという考え方は同じです。マジックナンバーの秘密やポイントについてはこちらを参照。
点灯チーム、対象チームの多さという点でクリンチナンバーは、残り試合の勝敗、引き分けの全パターンをシミュレーションするため非常に複雑です。この点がマジックナンバーとの大きな違いといえます。
残り試合数が少なくなったりクライマックス進出確定チームが増えると計算はわかりやすくなりますが、各球団の残り試合が10試合程度ではクライマックスシリーズ進出チームが確定することは少ないためシーズン終了ぎりぎりまでクリンチナンバーは点灯し続けます。
シーズンぎりぎりまでクリンチナンバーが点灯し続けるということはそれだけ消化試合が少なくなるといえますので、プロ野球ファンにとっても非常に興味深いナンバーとなっています。
まとめ
プロ野球もレギュラーシーズン終盤になるとクライマックスシリーズ進出の可能性について話題になることが増えます。
このクライマックスシリーズとは
- 消化試合を減らす目的でレギュラーシーズン終了後に日本シリーズの出場権を得るために導入された制度
- 出場条件はセリーグ、パリーグの各上位3チームになること。日本シリーズの出場権を求めてファーストステージ、ファイナルステージを争う
- ファーストステージはシーズン2位チーム、3位チームで争う。ファイナルステージはシーズン1位チームとファーストステージ勝者が対決し勝者が日本シリーズ出場権を獲得する。
- レギュラーシーズンの成績で順位を決定、レギュラーシーズンの順位を重視して1位チーム、2位チームにはそれぞれアドバンテージが与えられる
- クライマックスシリーズへの進出まで必要な勝利数をクリンチナンバーと呼び優勝マジックナンバーとは考え方は同じだが、対象チームが多い分クリンチナンバーの計算は非常に複雑
といった点が特徴です。
上位3チームとなることを目的に争うためレギュラーシーズンの消化試合は減り、シーズン終了ぎりぎりまで盛り上がるようになりました。シーズンが終わっても応援する球団がクライマックスシリーズに出場すれば日本シリーズに出場する可能性もあります。
レギュラーシーズン終了後もまだまだプロ野球を楽しめる制度として根付いてきました。今年はどんなドラマが起こるのでしょうか?非常に楽しみですね!