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高校野球タイブレークのルール、ランナーは何人?甲子園での結果は?

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2019年夏3回戦星稜対智辯和歌山のスコア

ここ数年の高校野球でもよく耳にするようになった「タイブレーク」制度、甲子園で導入されたのはまだ最近です。そのためまだ聞きなれない方やどんなルールなのかよくわからない方も多いのではないでしょうか?

そもそもタイブレーク制度とは、どんなルールでランナーは何人から始めるのか?ここまでの甲子園大会でどんな試合結果となったのか?をまとめました。是非見ていきましょう!

タイブレーク制度導入される背景とは?

これまでの甲子園大会では選手の体調への配慮から延長の回数が議論、検討され延長は18回から15回へと短縮されてきました。

しかし15回で決着がつかない場合は再試合となるなど甲子園大会ではこの再試合により日程が順延した場合、大会期間内に全日程を終えようとすると大会後半の休養日を消費することになってしまうため過密日程となることが問題視されてきました。

甲子園大会ではかつて戦前の中京商業(現中京大中京)対明石中の延長25回をはじめ、坂東投手と村椿投手の両エースの投げ合いとなった徳島商業対魚津高校、決勝で初の再試合となった松山商業対三沢高校、斎藤投手と田中投手の投げ合った早稲田実業対駒大苫小牧の決勝など延長18回再試合の激闘が繰り広げられてきました。

さらに甲子園の激闘を代表する箕島対星稜の延長18回での度重なる箕島の同点劇と劇的なサヨナラ勝ちや、春夏連覇を達成した松坂投手の横浜対PL学園の延長17回の死闘など多くの延長の熱戦があります。

こういった激闘の歴史は限界まで死力を尽くす甲子園の美談として語られてきましたし、甲子園をより魅力的なものとしてきたことも事実です。実際このような歴史背景から甲子園大会でのタイブレーク制導入も慎重な議論が進められてきました。

しかし選手ファーストの観点からこのタイブレーク制度の議論がいよいよ本格的に進みます。国際試合や社会人野球ではすでに導入されており、高校野球でも国体や明治神宮野球大会で実施されてきました。

そして高野連は甲子園大会でのタイブレーク制度の導入を決定し、2018年第90回センバツ高校野球から採用されることとなりました。とうとう歴史ある甲子園大会でも採用されるようになったタイブレーク制度、一体どんな制度なのか、続いて見ていきたいと思います。

関連記事:2020年センバツ高校野球から球数制限導入と飛ばないバットの検討へ!高校野球はどう変わる?

高校野球におけるタイブレークってどんな制度?

タイブレークという制度は実は野球だけではなくテニス、アメフト、バスケットボールでも採用されている制度です。いすれもタイ(同点)をブレーク(破る)という意味合いで用いられ、試合の勝敗を早く決するためやリーグ戦の同率首位チームの直接対決などを指します。

では高校野球ではどんなルールでランナーは何人から始めるのでしょうか?

甲子園大会でのタイブレーク導入までの経緯

高校野球でももともと国体や明治神宮野球大会ではタイブレーク制度は採用されていました。ここでのルールは9回を終えて同点の場合に、延長10回から1死満塁で攻撃するというものです。

その後、選手の体調管理を考慮して2013年の夏の大会から休養日を設定するなど配慮されてきましたが、2014年には一部の地区の春季大会からタイブレークが導入され始め、2015年の春季都道府県大会、地区ブロック大会に限り延長10回1死満塁からのタイブレークが正式に採用されます。

このころ全国大会である甲子園に直結する夏の地方予選、秋季大会、そして甲子園大会では導入の検討はされ始めましたが、導入は見送られていました。

しかし2017年第89回センバツ甲子園大会で2試合続けて延長15回引き分け再試合が発生し、高野連は検討を本格化、いよいよ2018年春の第90回センバツ大会、夏の第100回選手権大会から正式に導入が決定されました。

第90回センバツ大会ではタイブレークが実施された試合はありませんでしたが、第100回選手権大会の大会2日、1回戦の旭川大高校対佐久長聖戦で春夏通じて初のタイブレーク制度が実施されました。

甲子園大会のタイブレークのルール

  • 延長12回までに決着がつかない場合、13回の表から「ノーアウト1、2塁」で攻撃を開始します。開始する打順から最も打順の離れている前回の最終打者が1塁、次に離れている最終の前の打者が2塁ランナーにつきます。
  • それぞれ表と裏の攻撃を行い、イニング終了時点で得点の多いほうが勝者となり、裏の攻撃チームが勝ち越した時点でサヨナラ勝ちとなります。
  • 13回で決着がつかない場合は14回へ、さらに同点の場合は次のイニングへ移り決着がつくまで延々と続きます。
  • 延長が無制限となるため投手の登板可能イニング数に制限が設けられ、1試合で同じ投手が登板可能なイニング数は最大で通算15イニングとなります。
  • 投球制限により降板後の投手は、守備位置変更して野手として出場する場合はそのまま出場は可能です。
  • 甲子園大会(センバツ、選手権)の決勝戦のみタイブレークではなく15回まで延長戦を行い、15回までに決着がつかない場合は再試合となります。
  • 上記決勝戦の再試合は準決勝までと同様のタイブレーク方式となり、決着がつくまで13回からタイブレークを行います

このようにノーアウトランナー1、2塁の状況から攻撃を開始することで得点を入りやすくし試合の早期決着をはかります。1イニングで決着をつけるため表のチームと裏のチームでは戦術が変わってきます。

例えば表のチームはなるべく得点を重ねてその裏の守りで逃げ切りをはかれるような戦術をとることになりますが、逆に無得点の場合は裏の守りは1点も与えられないため相当なプレッシャーとなります。裏のチームは表で失った点数を上回らなければならないためその失点状況によって戦術が変わります。

表の攻撃では打順にもよりますが、まずはバントで手堅く送り1アウトランナー2,3塁の状況を作り出します。ここで安打が出れば2点、犠牲フライでも最悪1点は入ります。また投手力に自信があれば1点入れば十分ということでスクイズということもありますが、失敗のリスクも考えてなかなかスクイズをするケースはないでしょう。

一方で裏のチームは、表を無失点か1失点でしのげばほぼ100%送りバントで1死2,3塁の場面を作ります。1、2塁のケースでの強攻策はダブルプレー、下手したらトリプルプレーを招きます。送りバントもこのリスクがないわけではないですが、確率からすれば送りバントを採用するでしょう。

1アウトランナー2、3塁にできれば1点、もしくは2点を取る確率はあがります。ただし守りのチームは打順にもよりますが敬遠して満塁策をとることもあります。しかし満塁策は押出のリスクもあるので両刃の剣という側面もあります。

とにかく点を取るためのルールで相手も同じ条件ですからどういうプランをたてるかが非常に難しく、そのためプレイしているほうも見ているほうもハラハラドキドキする試合展開となります。

ただし2020年の選抜大会の代替大会となる甲子園交流試合では、10回からタイブレークに突入する特別ルールとなっています。

関連記事:2020年甲子園高校野球交流試合組合せ決定!放送予定と見どころや勝敗予想は?

甲子園での実施例は?どんな試合結果となった?

甲子園大会でのタイブレーク制の導入は当初、賛否両論がありました。やはり長い歴史のなかで延長25回、18回の激闘や15回再試合での決着の記録やドラマなどが演じられてきましたので、そういったドラマが観られなくなるのではないか?、せっかくの甲子園大会とことんまで試合をさせてあげたほうが良いのでは?といった反対の声もたくさんありました。

僕自身も甲子園でのタイブレーク?う~ん、どうなんだろう?という思いは当然ありました。延長戦での記録というのもタイブレークによってそれまでの記録と全く比較できなくなってしまいます。一方で選手ファーストとして選手の体調管理もやはり配慮しなければなりません。

が、しかしいざ導入されてみると先に触れたように、試合展開もハラハラドキドキしますし、観戦しているほうにも暑い中での長時間の観戦が避けられるのも意外とありがたかったりもします。

何よりも選手、投手の体調を考慮した場合、またアルプス席で応援する生徒、保護者のことを考えてもいたずらな長時間の試合よりは良いのではないかと思うようになりました。

まだ導入されて歴史の浅いタイブレーク制度ですが、すでに歴史的な試合もありました。どんな試合があったのか、どんな試合結果となったのか?紹介したいと思います。

初のタイブレーク、2018年第100回選手権大会旭川大高対佐久長聖

大会第2日の第4試合、延長12回4-4で決着がつかず甲子園史上初のタイブレークとなりました。13回はそれぞれ最初の打者が送りバントを実施、佐久長聖は失敗、旭川大高は成功しましたが両チームとも無得点、14回は佐久長聖が送りバントを実施したところ内野安打となって無死満塁からセカンドゴロの間に1点を勝ち取りました。

佐久長聖は14回の裏を無失点で守り切りタイブレーク導入初の勝利校となりましたが、タイブレークを導入した割にはなかなか得点に結びつかずタイブレークの戦術もなかなか難しいと思わせる試合結果となりました。

2例目、2018年第100回選手権大会星稜対済美

同じ大会の第8日の第2試合、2回戦のこのカードでは劇的な幕切れとなりました。もともと試合内容もドラマの連続で、6点差でリードされていた済美が8回裏に一気に8点をとって逆転、しかし星稜も負けずに9回表に2点を返して同点、そのまま延長に入っても両チーム無得点のままタイブレークに突入しました。

13回の表に星稜は2点を取り裏の守りにつきます。裏の攻撃の済美もタイブレークから無死満塁とし、続く1番打者の矢野選手がライトポールに直撃する満塁ホームランを放ちました。大会史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打で済美が劇的なサヨナラ勝ちをおさめました。

この試合は甲子園で観戦していましたが、8回の済美の逆転劇、9回表の星稜の同点劇に興奮しました。さらに最後のサヨナラ本塁打はちょうどバックネット裏の3塁側で観戦していたので、打った瞬間切れるかな?と思い観ていました。

打った矢野選手も1塁までの途中でファウルと思い走るのをやめかけていましたが、何と切れずにポールを直撃、予想しなかった終了劇に興奮した記憶がまだ新しい試合です。

3例目、2019年第101回選手権大会星稜対智辯和歌山

3例目のタイブレークは、2019年の第101回大会、第11日の3回戦でこちらも劇的な幕切れとなった試合でした。星稜はなんと前年に続く2回目のタイブレーク。この試合は大会ナンバー1投手奥川投手を擁する星稜と黒川、東妻など強打者並み居る智辯和歌山との注目カードでした。

試合展開は奥川投手が神がかり的な熱投で智辯和歌山打線を封じ、6回に1点を失うも延長12回で1-1のままタイブレークに突入、タイブレーク後も智辯和歌山に得点を許さず、一方中盤以降登板した智辯和歌山の池田投手も力投、1-1のまま14回裏にドラマが起きました。

タイブレーク後も送りバント封殺など堅い守りで無失点のまま切り抜けてきた両校でしたが、14回の裏星稜の6番打者福本選手のサヨナラ3ランで試合が決しました。

この試合も生観戦していましたが、打って喜ぶ星稜ナインと対照的にマウンドに崩れる池田投手、抱きかかえる選手の姿に感動を覚えました。息詰まる投手戦の最後としてはやや残酷ではありますが、歴史に残る1戦だったと思います。

ちなみにこの年の星稜は1回戦で前年タイブレークで敗戦した旭川大高と対戦、勝利しましたが、前年のタイブレークによる敗戦校どうしの対決というのも何かの因縁を感じました。

星稜はかつての延長18回箕島との敗戦や、松井選手の5敬遠、前年の済美とのタイブレーク敗戦など悲運なチームとして多く語られてきましたが、今回は歴史的な試合で勝利をおさめることができました。

4例目、2020年交流試合、中京大中京対智辯学園

4例目のタイブレークは、第92回選抜大会の代替大会として甲子園球場で開催された2020年高校野球交流試合の大会3日目の愛知県の中京大中京と奈良県の智辯学園との対戦です。

新型コロナウイルスの感染予防という観点から、試合時間を短縮することを目的にこの交流試合では9回終了時点で同点の場合10回からタイブレークに突入するという特別ルールで行われています。

試合は中京大中京が1回裏に3点を先制するも智辯学園も4回表に3点を返します。以降の展開は、今大会屈指の右腕中京大中京のエース高橋宏斗投手は150㎞超の速球と大きく曲がるスライダーを中心に智辯学園を無失点に抑えると智辯学園の2年生左腕西村王雅投手も2回以降中京大中京打線を無失点に抑えます。

結局3対3のまま9回を終了、10回からは無死1、2塁のタイブレークに突入しました。10回表の智辯学園の攻撃を高橋投手が無失点で切り抜けると、10回裏の中京大中京の攻撃は劇的な幕切れとなります。

先頭打者は9番バッターから始まる攻撃で、9番打者は送りバントを試みます。このバント処理に西村投手がもたつき打者走者も生かしてしまい、無死満塁となりました。続く1番打者好打者の西村友哉選手が放った打球は二塁手後方へのポップフライとなります。

内野へのフライが上がったため塁審は「インフィールドフライ」を宣告します。この時点で打者はアウトとなりましたが、二塁手の後方に上がる難しい打球を二塁手が落球してしまいます。

この時点で3塁走者は本塁へ突入、ホームへ返球されるも間に合わずホームインとなり中京大中京がサヨナラ勝ちをおさめました。二塁手が打球を捕球していれば3塁ランナーは3塁へ帰塁しなければいけませんが、落球の時点でインプレイとなりハーフウェイにいた3塁走者はそのままホームへ突入しました。

3塁走者の冷静な判断で勝ち越し点をもぎ取る形となり、中京大中京はこの世代公式戦28連勝という無敗で有終の美を飾りました。最後は「無敗で終える」という中京大中京の選手の執念が勝った結果となったのでしょう。

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強力中京大中京打線を3失点に抑えた2年生西村投手が泣き崩れるシーンが印象に残りましたが、3年生となる来年が楽しみな投手の一人でもありました。

5例目は選抜初、第93回選抜大会常総学院対敦賀気比

5例目は選抜史上初のタイブレークとなった2021年第93回大会の選抜大会、1回戦常総学院対敦賀気比戦となりました。前年に亡くなった名将木内幸男元監督の教え子で日ハムなどで活躍した島田直也監督の甲子園初采配の試合です。

常総学院は秋季関東大会準優勝、対する敦賀気比は秋季北信越大会優勝という注目のカードでもありましたが、2回表に常総学院がいきなり4得点のリード。試合はその後4-0のまま7回裏まで進み、敦賀気比が3得点で1点差に迫ります。

8回表に常総学院が1得点で5-3と突き放すもその裏敦賀気比は2得点で終盤に同点に追いつきました。試合は5-5のまま両校の救援投手陣が踏ん張り延長に突入しますが、両校無得点で12回裏を終了します。

12回を終了して選抜史上初のタイブレークに突入しました。12回表無死1、2塁の場面から常総学院はバスターを試みてライト前にタイムリーヒット、1点勝ち越すとさらにタイムリー2本で計4得点と敦賀気比を突き放します。

9-5でむかえた12回裏の敦賀気比の攻撃を無失点におさえ常総学院がタイブレーク戦を制しました。島田監督は監督就任後初の甲子園で初勝利。名将の元で高校時にはエースとして夏の甲子園で準優勝した勝ち運ぶりも発揮しました。

まとめ

高校野球、甲子園大会におけるタイブレーク制度はまだ導入されて歴史も浅く、どんなルールかどんな制度かよく知らない方も多いでしょう。タイブレークの導入の背景やルールについては

  • 甲子園や予選の過密日程における選手の体調管理を優先して導入された
  • 延長13回以降ノーアウトランナー1、2塁から試合を開始して得点しやすい状況にすることで試合の早期決着をはかる
  • タイブレーク制では延長無制限で決着がつくまで試合を行う
  • 決勝戦では15回まで延長戦、決着がつかない場合は再試合を行い、再試合は13回からタイブレークを行う

といった点が特徴として挙げられます。

また賛否両論もいろいろありましたが、いざ導入されれば選手の体調管理という側面でもメリットはありますし、タイブレークならではの試合展開、試合結果、ドラマも生まれています。

タイブレーク制度の今後も見ものです。選手ファーストである同制度が新たな歴史、激戦を繰り広げることに期待したいですね。

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