スポーツ選手の中でもとりわけプロ野球選手の年俸は高額で、今でも野球少年の憧れの職業です。近年では1億円を超えるプレーヤーも珍しくなく、2020年の年俸では実に100人を超える1億円プレーヤーが存在します。
今から30年以上前、落合博満選手がロッテから中日に移籍した際に1億3,000万円で契約更改したのが日本人初の1億円プレーヤーの誕生でした。以降は日本人選手の最高峰の年俸は5億円を超えるのが当たり前の時代となりました。
果たしてプロ野球選手の総年俸額や平均年俸はどのように推移したのでしょうか?そして2020年の12球団の年俸総額のランキングはどうなっているのか?見ていきたいと思います。
目次
プロ野球選手の年俸総額、平均年俸の推移
日本のプロ野球選手で構成される「日本プロ野球選手会」では、選手会に年俸の調査を毎年実施してその結果を公式ホームページに公表しています。その調査の結果から、昭和55年以降の球団別支配下公示選手の総年俸額が一覧として掲載されています。
その一覧から球団別に5年ごとの推移を見ていきましょう。
12球団別年俸総額推移(セリーグ)
年度 | 巨人 | 阪神 | 中日 | 広島 | ヤクルト | 横浜 |
昭和55 | 38,106 | 32,775 | 33,972 | 40,020 | 29,574 | 36,400 |
昭和60 | 64,752 | 56,168 | 63,156 | 63,180 | 48,160 | 46,984 |
平成2 | 107,558 | 67,920 | 107,970 | 85,480 | 72,020 | 79,185 |
平成7 | 269,494 | 153,640 | 186,940 | 135,830 | 158,490 | 114,470 |
平成12 | 354,731 | 178,180 | 233,140 | 162,570 | 190,440 | 221,895 |
平成17 | 387,274 | 254,550 | 288,490 | 153,210 | 208,210 | 284,875 |
平成22 | 284,587 | 317,210 | 285,260 | 144,690 | 199,710 | 227,910 |
平成27 | 427,350 | 220,590 | 209,542 | 208,780 | 181,415 | 150,150 |
令和元 | 387,879 | 258,492 | 181,363 | 237,106 | 198,928 | 230,378 |
単位は万円、昭和55年の巨人の年俸総額は3億8,106万円ですが、赤ヘル軍団として昭和54年に2回目の優勝をした広島の年俸が何とリーグ1位。5年後の総和60年は各球団とも倍増近くまで増えていますが、バブル景気を背景に急速に総年俸額が増えていったと思われます。
平成2年は巨人と中日が10億円超え、平成7年は各球団10億円を超える中、巨人が26.9億と断トツの年俸額となります。この頃はFA制度で巨人が補強にお金をかけるようになった時代でした。
年俸総額で12球団一を誇っていた巨人も平成22年は阪神に抜かれます。この時期は金本知憲選手、城島健司捕手、藤川球児投手の3人が4億円超え、さらに新井貴浩選手、鳥谷敬選手など1億円超えの選手が複数いた時代でした。
しかしその5年後には巨人が断トツの40億円超え、阿部慎之助捕手、杉内俊哉投手の5億円超えに内海哲也投手の4億円、これ以外の1億円超え選手が10名以上と2014年まで3連覇の結果、軒並み選手の年俸が上がった年でした。
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令和元年は巨人は相変わらず唯一30億円超えの1位ですが、前年まで3連覇した広島がリーグ3位まで躍進しました。球界の盟主と言われる巨人軍は通算成績も46回の優勝回数を誇るだけあり、年俸総額でも球界を引っ張ってきました。
12球団平均年俸推移(セリーグ)
年度 | 巨人 | 阪神 | 中日 | 広島 | ヤクルト | 横浜 |
昭和55 | 657 | 575 | 596 | 690 | 558 | 650 |
昭和60 | 1,136 | 1,003 | 1,108 | 1,053 | 860 | 839 |
平成2 | 1,992 | 1,258 | 1,928 | 1,500 | 1,286 | 1,414 |
平成7 | 4,146 | 2,401 | 2,302 | 2,191 | 2,438 | 1,817 |
平成12 | 5,457 | 2,828 | 3,822 | 2,622 | 3,228 | 3,414 |
平成17 | 6,246 | 3,977 | 4,579 | 2,471 | 3,358 | 4,748 |
平成22 | 4,824 | 5,287 | 4,601 | 2,297 | 3,274 | 3,736 |
平成27 | 6,893 | 3,558 | 3,435 | 3,367 | 2,926 | 2,503 |
令和元 | 6,926 | 4,381 | 2,973 | 3,887 | 3,209 | 3,657 |
平均年俸は総年俸額を支配下選手の人数で割ったものです。昭和55年は平均で1,000万円に満たないというのは意外ですが、40年後の令和元年には5~10倍近く平均年俸は増えています。しかし物価についてはどうかといえばそこまで増えていません。
昭和55年はコーヒー1杯250円が令和元年は500円、同じくうどん、そばが280円から670円へと物価の上昇率より年俸の上昇率の方がはるかに大きくなっています。物価の上昇よりも選手年俸が上昇している点では、選手の待遇はよりよくなっていると言えます。。
この頃の球界のトッププレーヤー王貞治選手が約8,000万円、山本浩二選手が約5,000万円ですから5億円プレーヤーも珍しくない今と比べると年俸水準はかなり上がってきています。
逆に昭和55年の頃のプロ野球選手はそこまで高給取りだったのかと言うと、トッププレーヤー以外はそこまで恵まれていなかったのかもしれません。今では平均年俸3,000万円以上あることを思えば、昔は本当に活躍しないと年俸は増えなかったのではないでしょうか。
12球団別年俸総額推移(パリーグ)
年度 | 西武 | ソフトバンク | 日ハム | ロッテ | オリックス | 近鉄・楽天 |
昭和55 | 31,726 | 30,276 | 27,144 | 32,395 | 43,605 | 34,314 |
昭和60 | 63,742 | 43,725 | 42,952 | 53,514 | 60,021 | 57,285 |
平成2 | 113,850 | 81,950 | 74,570 | 71,193 | 83,480 | 84,670 |
平成7 | 243,020 | 222,280 | 144,300 | 137,120 | 143,230 | 151,135 |
平成12 | 224,960 | 182,600 | 155,150 | 160,530 | 171,840 | 151,110 |
平成17 | 225,335 | 272,124 | 216,430 | 193,492 | 164,540 | 166,140 |
平成22 | 225,510 | 322,480 | 239,970 | 228,740 | 157,260 | 208,360 |
平成27 | 198,840 | 342,100 | 202,065 | 196,150 | 272,330 | 180,300 |
令和元 | 194,248 | 392,303 | 211,475 | 197,446 | 161,915 | 261,572 |
昭和55年はオリックスの前身阪急が黄金期、近鉄もリーグ2連覇を達成したころで、リーグ1位、2位の年俸総額でした。しかし昭和50年代後半からは西武の黄金期をむかえます。昭和60年は西武が1位の6.3億で、リーグ1位になって以降は毎年のように優勝するほどで平成2年はリーグ唯一の10億円超えでした。
平成7年は西武が1位ですが、ソフトバンクの前身ダイエーが2位とこの2球団が20億円を超えました。平成12年も西武が1位、2位がダイエーですが20億円割れ、しかしこの年に2連覇を達成したので翌平成13年には20億円台に復帰しています。
平成17年にはダイエーからソフトバンクに親会社が変わり、ソフトバンクが総年俸で1位となります。この頃から日ハムも優勝争いに加わるようになり、西武と合わせた3球団が20億円超えとなります。
平成17年以降はソフトバンクが1位をキープし続けます。平成22年、23年に連覇、以降リーグ優勝3回を重ね、総年俸額はリーグ1位どころか巨人を上回って12球団1位になるほど総年俸額が高騰しました。令和元年はパリーグの他球団の倍近くまで増えています。
12球団別平均年俸推移(パリーグ)
年度 | 西武 | ソフトバンク | 日ハム | ロッテ | オリックス | 近鉄・楽天 |
昭和55 | 547 | 522 | 468 | 589 | 765 | 602 |
昭和60 | 1,099 | 825 | 767 | 991 | 1,053 | 1,005 |
平成2 | 1,997 | 1,438 | 1,308 | 1,249 | 1,465 | 1,485 |
平成7 | 3,857 | 3,368 | 2,255 | 2,078 | 2,469 | 2,438 |
平成12 | 3,688 | 2,945 | 2,675 | 2,867 | 3,242 | 2,437 |
平成17 | 3,694 | 4,319 | 3,491 | 3,071 | 2,385 | 2,724 |
平成22 | 3,524 | 5,119 | 3,809 | 3,574 | 2,621 | 3,361 |
平成27 | 3,314 | 5,798 | 3,259 | 3,269 | 4,464 | 2,956 |
令和元 | 3,237 | 6,538 | 3,304 | 3,134 | 2,654 | 4,288 |
昭和55年頃のパリーグの平均年俸は日ハムの平均は昭和55年から60年まではやや水準が低めですが、セリーグと大差ありません。パリーグは平成12年ころまでは西武が平均年俸でリーグ1位でしたが、平成17年にソフトバンクと順位が入れ替わるとソフトバンクは右肩上がりで平均年俸も増えていきます。
令和元年を見る限りでは巨人の6,926万円に次いでソフトバンクが6,538万円とこの2球団の平均年俸は突出しています。12球団で平均年俸が3,000万円を切っているのはオリックスと中日のみとなりました。
セリーグとパリーグを比べても、セリーグの方が若干上回るもののリーグによる平均年俸の差にも大きな開きはありません。40年前と比較すると各球団とも5~10倍に増えているのはセリーグ同様です。
2020年12球団総年俸ランキングは?
2019年はソフトバンクが日本一、パリーグの優勝は西武、セリーグの優勝は巨人でした。令和元年は巨人が12球団1位、ソフトバンクが2位とこの2球団が断トツでしたが、2020年はどうなるでしょうか?
順位 | 球団 | 年俸総額 |
1位 | ソフトバンク | 65.3億 |
2位 | 巨人 | 43.3億 |
3位 | 東北楽天 | 34.8億 |
4位 | 阪神 | 32.1億 |
5位 | 広島 | 31.1億 |
6位 | 横浜DeNA | 30.8億 |
7位 | 埼玉西武 | 30.3億 |
8位 | 日ハム | 28.9億 |
9位 | オリックス | 28.6億 |
10位 | ヤクルト | 26.7億 |
11位 | 中日 | 24.8億 |
12位 | 千葉ロッテ | 24.8億 |
令和元年までのNPB選手会の調査結果には外国人選手が含まれていないため単純比較はできません。ソフトバンクは外国人選手9人で約25億円、巨人は5人で約7億円とソフトバンクは外国人に人数、金額ともに12球団でも断トツです。
ソフトバンクは、サファテ投手、新加入のバレンティン選手がともに5億円、デスパイネ選手4億円、こちらも新加入ムーア投手が約3.8億、バンデンハーク3億円と3億円超の選手が5人もいます。
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12球団を見渡しても3億円を超える外国人選手は、オリックスのジョーンズ選手4.4億円、中日ビシエド選手3.5億円、巨人サンチェス投手3.4億円の3人のみです。ソフトバンクは3億円超えの選手が9人いますが、そのうちの5人が外国人選手です。
しかし日本人でも3億円超えの選手が柳田選手5.7億円、森投手4.6億円、松田選手4億円、千賀投手3億円の4人います。同じく巨人も菅野投手6.5億が日本人最高額、坂本選手5億、丸選手4.5億円、陽選手3億円の日本人4人が3億円超えの4人と12球団で18人いる3億円プレーヤーのうち8人がこの2球団の選手です。
実力、人気ともに両リーグのナンバー1の球団だけあって年俸総額も飛びぬけていますが、東北楽天も浅村選手の5億円、岸投手、則本投手の3億円と3億円超の選手が3人います。
このため東北楽天は12球団3位の年俸総額となりました。またリーグ2連覇の西武は前年からのアップとなりましたが12球団では7位と、12球団の上位6球団には入りませんでした。
上位6球団にはセリーグ4球団、パリーグ2球団でしたが、リーグの合計額ではセリーグ188.7億円、パリーグ212.6億円とソフトバンクが牽引しパリーグの年俸総額がセリーグを上回りました。
まとめ
日本プロ野球の総年俸額の推移を選手会が調査結果を公表している昭和55年から見てきました。実際のところセリーグとパリーグの球団ごとの年俸総額に大きな差はなく、各リーグのトップはセリーグは巨人、パリーグは黄金期の西武、ソフトバンクが多く占める結果となっています。
昭和55年ころからの物価の上昇率に比べるとプロ野球選手の年俸の方が上昇率が高いこともわかりました。1億円プレーヤーがいなかった昭和55年に比べて現在は1億円プレーヤーが100人以上いることからもプロ野球選手の年俸は高額化してきました。
さらに2020年の12球団の年俸総額ランキングでは3億円超えの外国人選手を5人抱えるソフトバンクが断トツの1位、巨人が2位という結果になりました。
ここ数年ではソフトバンクの年俸総額の高さが際立っており金持ち球団の巨人をも上回っています。東北楽天も3位とセリーグの人気球団阪神の4位を上回りました。年俸総額でもパリーグがセリーグを上回るなどパリーグの待遇の良さはかつてに比べて向上しています。
球団支出の大半を占める選手年俸なので各球団とも青天井に拠出するわけにもいきませんが、夢のある職業として人気を維持し続けるためにも何とか年俸を高水準で保ってほしいところです。
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