過去の甲子園(全国)大会で中止となった大会は3回あります。
です。第27回選手権大会は太平洋戦争の戦局悪化により終戦後の昭和21年の選抜大会まで開催されませんでした。これら中止になった大会の直前の大会ではいずれも愛知県代表の高校が優勝しています。
中止になった各大会の直前の大会を見てみましょう。
1918年の第4回選手権大会は米騒動により中止となりました。歴史の教科書でも目にしたことがある人は多いと思いますが、米の価格が暴騰したことを発端に日本各地で暴動が起こった事件です。
米騒動が起きた8月上旬にはすでに各地区予選が終了し代表校も決定、全国大会(甲子園球場はまだない)のために選手たちはすでに関西入りしていました。組み合わせ抽選も終え宿舎で推移を見守っていたところ、大会の中止が決定されました。
このため第3回大会の優勝校愛知一中(現旭丘)が優勝旗をそのまま保管することになりました。この年はまだ選抜大会が始まる前でしたので、結局愛知一中の優勝を最後に大会は中止、第5回大会は翌々年の1919年に再開されました。
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1941年の第27回大会は太平洋戦争の戦局が悪化、同年7月には当時の文部省(現文科省)により全国的な体育大会は禁止とされ朝日新聞社が主催する全国中等学校野球大会(全国高等学校野球選手権大会の前身)は中止となります。
代わりに文部省主催の中等野球全国大会というかたちで大会は甲子園で開催され徳島商が優勝しました。ですが、全国高等学校野球選手権大会として開催されていないためいわゆる夏の甲子園大会は「中止」というのが公式記録です。
なおこの前年の第26回大会は朝日新聞主催(後援文部省)の全国中等学校野球大会として開催されましたが、全日本中等学校体育競技総力大会の中に組み込まれバスケや陸上、水泳、テニスといった他の競技と一緒に開催されました。
この26回大会の優勝は和歌山の海草中(現向陽)でしたが、中止となった27回大会と同年春の第18回選抜大会で優勝したのが東邦商(現東邦)です。この東邦商が優勝したのを最後に甲子園大会は終戦まで開催されない状態が続きました。
2020年の第92回大会は新型コロナウイルスの感染拡大により選抜史上初の中止となりました。阪神大震災(1月)、東日本大震災(3月)の際にも選抜開催の直前に起きたにも関わらず何とか開催までこぎつけました。
しかし新型コロナについては開催直前の段階で終息の見通しが全くないことや目に見えないウイルスによる感染拡大の懸念が解消されないことから中止へと追い込まれました。
この92回大会の直前の91回大会の優勝が東邦高校でした。直前の大会という意味では第101回選手権大会が最後の大会となります(優勝は履正社高校)が、第91回の東邦高校の優勝後に選抜大会は中止となりました。
なお東邦高校は平成最初の甲子園大会(第61回選抜)と平成最後の甲子園大会(第91回選抜)を優勝したことや、選抜の優勝回数も歴代最多の5回となったことで何かと話題になったのも記憶に新しいところです。
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甲子園大会の長い歴史において中止という悲しい出来事の直前の大会には愛知県代表が優勝しているということでしたが、もちろん愛知県代表校の優勝が不吉という意味ではありません。甲子園での優勝回数が大阪に次ぐ2位という数多くの実績があるからこそ、このような偶然にも遭遇したと言えるでしょう。
このリベンジ優勝というのは(勝手な造語です)、前年の大会で準優勝、翌年の大会で優勝という雪辱を果たした優勝のことを指します。同年春の選抜で準優勝、夏に優勝というリベンジは含みません。
つまり準優勝した先輩の雪辱を果たすべく翌年の大会で見事優勝を飾るというパターンは、春の選抜が6回、夏の選手権が1回あります。
大会 | 校名 | 準優勝 | 優勝 |
選抜 | 中京商(現中京大中京) | 第14回1937年 | 第15回1938年 |
東邦商(現東邦) | 第15回1938年 | 第16回1939年 | |
岐阜商(現県岐阜商) | 第16回1939年 | 第17回1940年 | |
中京商 | 第30回1958年 | 第31回1959年 | |
東邦 | 第60回1988年 | 第61回1989年 | |
愛工大名電 | 第76回2004年 | 第77回2005年 | |
選手権 | PL学園 | 第66回1984年 | 第67回1985年 |
愛知県と言えば「私学4強」と言われる中京大中京、東邦、愛工大名電、享栄が長らく愛知県代表校の座をほぼ交互に争ってきた時代がありました。享栄高校は優勝、準優勝はありませんが、ほかの3校は見事このリベンジ優勝を達成しています。
選抜の最多優勝回数5回の東邦、4回の中京大中京はこのリベンジ優勝を2回ずつ達成、愛工大名電は優勝は第77回選抜大会のみですがこの時に達成と選抜大会6回のうち5回が愛知県代表によるものです。
戦前の選抜大会は愛知代表が同時に最大4校出場することもありましたが、第15回大会は中京商と東邦商の決勝でした。第14回大会から第17回大会はこのリベンジ優勝が3校続けて達成しました。
選手権で唯一達成しているPL学園はKKコンビの時代で準優勝の第66回大会の前は1年生KKコンビで優勝しています。このため優勝→準優勝→優勝というこれはこれでものすごい記録で、準3連覇と言える成績です。
なお愛知県代表校の選抜大会準優勝は上記の5回以外は第17回(1931年)中京商、第27回(1941年)一宮中、第79回(1997年)中京大中京と3回あり、計8回の準優勝のうち5回が翌年に優勝していることになります。
これだけを見ると愛知県代表が準優勝すると翌年は優勝?と期待してしまいそうですね。
愛知代表は最近では私学4強のうち中京大中京、東邦、愛工大名電の3強が入れ替わって甲子園に出場するケースが特徴です。他府県では大阪(大阪桐蔭、履正社)、神奈川(横浜、東海大相模)、岩手(花巻東、盛岡大付)、群馬(前橋育英、健大高崎)、埼玉(花咲徳栄、浦和学院)など2強で占めるケースもありますが、愛知のような3強で占めるケースは珍しいです。
このためこれら3強と他府県の常連校との対戦が被ることは確率的には起こりえます。では対戦回数が多い高校はどんな高校があるでしょう。
特に中京大中京、東邦は戦前から甲子園に出場しているので古豪との対戦は多く、愛工大名電を含めた3強と多く対戦している高校とその戦績は以下の通りです。
順位 | 試合数 | 対戦校 | 中京大中京 | 東邦 | 愛工大名電 |
1 | 10 | 広陵 | 2勝5敗 | 2勝1敗 | - |
2 | 9 | 報徳学園 | 2勝1敗 | 3勝1敗 | 0勝2敗 |
3 | 8 | 大体大浪商 | 1勝4敗 | 3勝0敗 | - |
龍谷大平安 | 5勝0敗 | 2勝1敗 | - | ||
5 | 5 | 天理 | 1勝1敗 | 1勝0敗 | 1勝1敗 |
戦前から甲子園の常連である高校との対戦が多くなるのはある程度必然として、広陵高校との対戦が最も多く10試合あります。ちなみに広島のもう一つの強豪校広島商との対戦は中京大中京の2試合しかありません(中京0勝2敗)。
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広陵との対戦は最近でも2017年夏の選手権に中京大中京が対戦して敗戦、逆に東邦が2019年春の選抜で対戦して勝利しています。中京大中京の広陵との相性は悪く特に平成以降は3連敗なのに対し、東邦は戦前に1敗したものの平成以降は2連勝と真逆の結果となっています。中京大中京は広島商、広陵に2勝7敗と苦手にしています。
2位の報徳学園はなぜかよく対戦しているイメージがあり中京大中京、東邦ともに勝ち越していますが、愛工大名電は0勝2敗と負け越しています。報徳学園が甲子園に初出場した1961年以降、春夏36回の出場回数のうち4回に1回は愛知の私学3強と対戦していることになります。
3位の大体大浪商との対戦は全てが戦前から昭和30年代の浪華商時代のものです。こちらも中京が1勝4敗と負け越しているのに対して東邦は3勝0敗と得意にしていました。東邦の対大阪勢の対戦成績を調べてみても東邦8勝2敗と抜群の相性を誇りますが、中京は5勝6敗と負け越しています。
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同じく3位の龍谷大平安は春夏甲子園出場回数75回と歴代最多とあって中京大中京、東邦との対戦も多く、中京は無敗の5勝、東邦も2勝1敗と大きく勝ち越しています。5位の天理との対戦も対戦が多いイメージでしたが、平成以降で中京大中京、東邦が1回、愛工大名電が2回と近年対戦している回数が比較的多いのが特徴です。
なお甲子園常連校でも帝京、仙台育英、星稜などとの対戦はなく、大阪桐蔭とは東邦のみ対戦(1勝1敗)、明徳義塾とは中京大中京のみ対戦(1敗)と対戦が少ない高校もあります。
愛知県代表はしばらく私学3強の時代が続いていますが、少し前までは享栄を含めた私学4強、さらに愛知を含めた私学5強と言われた時代もありました。これらの私学5強が対戦した高校も「かぶる」ケースがあり、対戦成績、相性が真逆となる結果も多くあります。
特に最近で顕著だったのは、既出の広陵高校で平成以降3連敗の中京大中京に対して東邦が2連勝という例がありますが、広陵以外の対戦校がかぶる例の主な対戦結果は以下の通りです。
対戦校 | 中京大中京 | 東邦 | 愛工大名電 | 享栄 | 愛知 |
大体大浪商 | 1勝4敗 | 3勝0敗 | - | 0勝1敗 | 0勝1敗 |
徳島商 | 1勝0敗 | 0勝1敗 | - | 1勝2敗 | 0勝1敗 |
高知商 | 1勝0敗 | 0勝1敗 | 1勝0敗 | 0勝1敗 | - |
鹿児島実 | 2勝0敗 | 0勝1敗 | - | - | - |
北海 | - | 1勝0敗 | - | 0勝1敗 | - |
郡山 | 1勝0敗 | - | - | 0勝1敗 | - |
清峰 | - | 1勝0敗 | 0勝1敗 | - | - |
花巻東 | 1勝0敗 | 0勝1敗 | - | - | - |
関東一 | 0勝1敗 | 1勝0敗 | - | - | - |
日本文理 | 1勝0敗 | 0勝1敗 | - | - | - |
八戸学院光星 | - | 1勝0敗 | 0勝1敗 | - | - |
済々黌 | 0勝2敗 | - | - | - | 1勝0敗 |
と私学5強との対戦数が少ないものの対戦結果が真逆となる例が目立ち、特に近年では花巻東、関東一、日本文理、八戸学院光星が顕著でした。
ちなみに日本文理は2014年選抜で豊川高校が勝利、八戸学院光星は2019年選手権で誉高校が敗戦、1998年選抜で豊田西が勝利と私学5強以外でもかぶる例があり、履正社も2012年選抜で愛工大名電が勝利していますが、2014年選抜準決勝で豊川は敗戦しています。
県勢の相性が真逆となる高校がある一方で、どうにも相性の悪い高校があります。複数対戦して1勝もできていない高校は以下の通りです。
対戦校 | 敗退した高校 | ||
横浜 | 中京大中京、東邦、大府、愛産大三河 | ||
済美 | 中京大中京、東邦、愛工大名電 | ||
聖光学院 | 愛工大名電、東邦 | ||
新湊 | 享栄、愛工大名電 | ||
洲本 | 中京大中京、東邦、時習館 |
2校しか対戦していない高校は対戦数が少ないのでたまたまの結果とも言えますが、横浜高校に対しては愛知県勢は4敗と全敗。しかし同じ神奈川県の2強の一角東海大相模に対しては中京大中京、東邦ともに1勝0敗と全勝しています。
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済美高校にいたっては2004年の選抜2回戦で東邦、決勝で愛工大名電が、同年選手権の準々決勝で中京大中京が全て1点差での敗戦と愛知県民の希望がことごとく打ち砕かれました。この時の済美高校の監督は上甲監督で、1988年選抜の決勝でも上甲監督率いる宇和島東高校に東邦が敗戦しています。
なお番外では名将高嶋監督の智辯和歌山には豊田大谷が1998年に1勝していますが、中京大中京は2000年選手権、東邦は2002年選手権でともに敗退と愛知2強にとって相性の悪い相手でした。
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高校野球甲子園大会において過去にはジンクスと言われるものはいくつもありますが、今回は愛知県代表校にまつわるジンクスを紹介しました。
についてまとめました。甲子園優勝ランキングでも大阪に次いで多いことから優勝にまつわるジンクスが多くなるのも必然かもしれません。
さらに愛知代表は私学3強が入れ替わって甲子園出場することが多いことから対戦相手がかぶることは珍しくないでしょう。一方で、片や相性がよく片や相性が悪い高校があるのが特徴的でした。
次の甲子園出場校がどこの高校になるのかも興味深いですが、因縁の対決がまた見られるのでしょうか?期待しましょう!