日本プロ野球の12球団は全てがれっきとした「株式会社」です。そして株式会社は会社法という会社に対していろんなルールを定めた法律により会社の経営状態を表す決算を公に告知することが義務付けられています。
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この会社法に則って各球団は決算公告を行っています。ただし読売巨人軍と中日ドラゴンズは非公表となっています。理由は定かではありませんが、ともに親会社が非上場の新聞社という事情があるのかもしれません。
決算書には主に会社の資産や負債状況を表す貸借対照表と1年間の売上高や費用といった収支を表す損益計算書がありますが、決算公告ではこの貸借対照表だけを公告している球団がほとんどで売上高は公開されてません。
いずれにしても国の広報、公告紙である「官報」にこのプロ野球団の決算公告が記載されています。新型コロナの影響を受ける各球団の2019年シーズンの決算公告から収益、もうけがいくらあるのかまとめてみました。
球団 | 決算日 | 純利益 | 利益剰余金 |
横浜DeNAベイスターズ | 2019年12月31日 | 15億2,500万円 | 47億5,100万円 |
阪神タイガース | 2020年3月31日 | 3億8,400万円 | 89億1,000万円 |
広島カープ | 2019年12月31日 | 4億8,700万円 | 87億1,100万円 |
東京ヤクルトスワローズ | 2019年12月31日 | 1億600万円 | 1億7,400万円 |
福岡ソフトバンクホークス | 2020年2月29日 | 5億3,700万円 | 88億1,200万円 |
西武ライオンズ | 2020年3月31日 | 8億5,200万円 | 48億2,000万円 |
楽天野球団 | 2019年12月31日 | ▲7,700万円 | ▲3,700万円 |
北海道日本ハムファイターズ | 2019年12月31日 | 4億7,200万円 | 89億8,500万円 |
千葉ロッテマリーンズ | 2019年12月31日 | 7億5,500万円 | 11億7,300万円 |
オリックス野球クラブ | 2020年3月31日 | 非公表 | ▲800万円 |
非公表の巨人、中日と純利益を公表していないオリックスを除く9球団が純利益を公表しています。この3球団を除く9球団のうち東北楽天を除く8球団が黒字を確保していました。
唯一の赤字球団だった東北楽天は7,700万円の赤字と前年4,700万円より赤字が悪化しています。親会社の楽天からすればこの赤字分の7,700円の赤字を補填するのは痛くもかゆくもないでしょう。この程度の赤字ならば球団は「自立」していると言えますが、過去の利益の積み重ねである利益剰余金は3,700万円の欠損です。
純利益が非公表だったオリックスは利益剰余金もぎりぎりマイナスの800万円です。まだ債務超過ではないことを考えればなんとか自立している状態と言えます。
かつてのように親会社が赤字を補填するどころか、独自で利益剰余金を維持している球団がほとんどというのは意外でした。それどころか横浜のように純利益が10億円を超える球団や西武、ロッテのようにパリーグで10億円近い利益があるのも驚きです。
横浜や西武、千葉ロッテは球場の飲食、看板広告収入などの営業権を持っていることが寄与しているといえます。このあたりはソフトバンク、阪神、広島が利益を出していることのひとつの要因であるでしょう。
西武は前年の利益15億超ありましたが、菊池雄星投手のメジャー移籍に伴うポスティング譲渡金11億円が大きく寄与しているようです。これを除いた今期も利益を確保している点は健全な経営状態にあることを示しています。
一昔前は球団単独で黒字をだしているのは巨人、阪神くらいと言われた時期もありましたが、今やほとんどの球団が単独で黒字を確保できているのは球団の努力のたまものでしょう。
それにしてもパリーグの堅調ぶりは目を見張るものがあります。ソフトバンクのみ売上高が公表されていましたが、317億円と破格の金額でした。売り上げの割に利益が多くないのは12球団断トツの選手総年俸約が影響していそうです。
ソフトバンクの2020年契約の3億円超えプレーヤーは柳田選手(5.7億)を筆頭にサファテ選手、バレンティン選手(ともに5億)、森投手(4.6億)、松田選手、デスパイネ選手(ともに4億)、ムーア投手(3.8億)、千賀投手、バンデンハーク投手(ともに3億)と9人もいます。
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これらの年俸は2020年度の決算に影響しますので、さらに費用が増える見込みです。2020年の総年俸は約65億円ですが、他球団の総年俸の平均は30億円前後という点から見てもほぼ倍の総年俸にあたります。
球団が稼いだ売り上げから選手を補強、補強した結果チームが優勝して球団の収入も増えるといったスポーツビジネスの良いサイクルができています。2020年も新型コロナによる試合数減や無観客の影響で減収は避けられない見通しですが、利益剰余金82億円とまだまだ体力はありそうです。
先にも触れましたように西武はポスティング収入が大きく寄与してましたが、かつては松坂投手がメジャーに移籍した2006年は60億円のポスティング収入を得ました。ざっと11球団の選手総年俸平均額約30億円の倍にあたります。
この時は球場の改修にこのポスティング収入をあてましたが、利益剰余金48億円にも大きく寄与しているでしょう。2020年は西武に復帰した松坂投手はこれだけでも十分球団に恩返ししたといえますね。
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松坂投手が14年ぶりに復帰した西武はチケット収入やグッズ収入の増加が見込めそうでしたが、新型コロナにより限定的でしょう。しかしポスティング移籍した選手が久しぶりに復帰して再び球団に売り上げ増をもたらすというのも単純な話ではないですが、これからの球団経営の在り方の一つとなるかもしれません。
千葉ロッテも業績は好調のようです。かつて川崎球場を本拠地としていたロッテは球場にいる選手の数より観客の数の方が少ないと揶揄されましたが、千葉に移転してから地域密着化に尽力、赤字経営は続いたものの単年で利益を出すようにまでなりました。
利益剰余金も11億円と安定経営になりつつあり、選手とファンが一体化した応援などファンサービスが功を奏して観客動員数も着実に伸ばしています。
西武、ロッテの2球団は圧倒的に人口の多い東京圏にあることも観客動員という点で有利とも言えますが、東京圏に比べて人口が多くない札幌に本拠地を置く日本ハムも利益を上げています。
日本ハムは札幌ドームが全く別の経営体であるため球場使用料が割高という不利な点があるにも関わらず利益を出せているのは、シーズン観客動員数約200万人というソフトバンクに次ぐ集客力が大きいようです。
日本ハムも札幌に移転して以降、北海道の地元球団として定着するよう努力を重ねてきました。それに加えてダルビッシュ投手、中田翔選手、大谷翔平選手、清宮選手、そして吉田輝星投手と甲子園のスターをことごとく獲得してきたことも集客を増やした要因としてあるでしょう。
東北楽天は赤字ではあるものの積極的にFA選手を補強するなどチーム力アップに力を入れていることで支出が増えている側面もあるでしょう。観覧車に代表されるような積極的な球場改修によるボールパーク化構想により観客動員も着実に伸ばしています。
かつては東京ドーム、川崎球場、日生球場、藤井寺球場、大阪球場、西宮球場といった東京圏、大阪圏の球場を本拠地としていた日本ハム、ロッテ、近鉄、南海、阪急といったパリーグの球団が、身売り、合併消滅から地方への移転を経て見事に地域と密着した球団へと発展をとげています。
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シーズン観客動員300万人を超える巨人、阪神という老舗の2大球団には及ばなくとももはやパリーグ人気はセリーグに迫る勢いです。決算の収益がそれを物語っていると言えます。
日本プロ野球の12球団は果たして儲かっているのか?という疑問から黒字球団、赤字球団を調べてまとめてみました。10球団が官報に公開している決算公告から各球団のもうけである収益がいくらなのか純利益をまとめたところ
とかつては親会社からの損失補填がなければ経営が立ち行かなかったプロ野球の球団経営も、ほぼ全ての球団が自立で経営していることがわかりました。特にパリーグはソフトバンクを筆頭に地域に根差した球団運営により着実に経営状態が上向いています。
もはや親会社の宣伝塔として赤字が容認される時代ではなく、球団が単体でもうけを出せる時代となりました。球団の経営努力によるたまものですが、年間200万人近くの観客を動員するコンテンツは他のどのスポーツ、コンサートにもないと言えます。
しかし2020年は新型コロナ感染拡大による無観客、制限入場が続きプロ野球経営にかなりの暗い影を落としそうです。決算公告が公表され次第、更新しますが赤字球団が続出となるのではないでしょうか?
今後のプロ野球の発展のためにも各球団が感染防止対策を積極的に行い、少しでも多くのファンが球場に安心して足を運べるよう引き続き期待したいところです。一度球場にも行きましたが、球団、球場の対策、ファンのマナーも素晴らしいものでした。そしてプロ野球ファンとして来季はどんどん球場に行きたいと思います!