過去の春夏の甲子園大会で優勝した公立高校と優勝回数をランキングにしてみました。
順位 | 回数 | 校名 | 都道府県 | 春 | 夏 |
1位 | 7回 | 広島商 | 広島 | 1 | 6 |
松山商 | 愛媛 | 2 | 5 | ||
3位 | 4回 | 高松商 | 香川 | 2 | 2 |
県立岐阜商 | 岐阜 | 3 | 1 | ||
箕島 | 和歌山 | 3 | 1 | ||
6位 | 3回 | 桐蔭(旧和歌山中) | 和歌山 | 1 | 2 |
池田 | 徳島 | 2 | 1 | ||
8位 | 2回 | 向陽(旧海草中) | 和歌山 | 0 | 2 |
小倉 | 福岡 | 0 | 2 | ||
習志野 | 千葉 | 0 | 2 | ||
津久見 | 大分 | 1 | 1 | ||
神港(旧第一神港商) | 兵庫 | 2 | 0 |
公立高校の優勝回数で最多は広島商業、松山商業の7回です。この両校は高校野球界でも超名門で夏の優勝回数それぞれ6回、5回は全国歴代2位と3位(大阪桐蔭とタイ)にランキングされます。
この両校は選抜よりも選手権に強く、選抜は広島商は1931年(昭和6年)の第8回、松山商は1925年(大正14年)の第2回、1932年(昭和7年)の第9回といずれも戦前に優勝して以来、春の優勝は遠ざかっています。
選手権は、広島商は1924年(大正13年)の第10回大会に初優勝、戦前の第15回、16回には連覇を達成、昭和最後となる1988年(総和63年)の第70回大会まで6回の優勝を成し遂げてますが、平成以降は優勝がありません。
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松山商は戦前の1935年(昭和10年)の第21回大会で選手権初優勝、戦後間もない1950年(昭和25年)第32回大会には松山東高校として2回目の優勝を達成して以降、1996年(平成8年)の第78回大会まで戦前から平成まで5回優勝しています。
続いて3位には3校が4回タイでランキングされました。高松商は、1924年(大正13年)の選抜第1回大会に甲子園初優勝、選手権も戦前に2回、戦後は1960年(昭和35年)の第32回選抜大会が最後、県岐阜商は選手権、選抜ともに戦前に達成しています。これら両校は戦前の戦績がずば抜けていており古豪と言われるゆえんです。
箕島高校は戦後の昭和40年代以降に台頭してきた高校で、名将尾藤監督のもと選抜3回、選手権1回の優勝、特に圧巻なのは昭和54年に春夏連覇を達成しています。公立高校による春夏連覇は箕島高校のみ、立派な戦績です。
これら上位の公立高校5校のうち4校が商業高校です。大正から昭和の戦前までは私立高校が商業高校だった高校も多く、当時から高校野球の名門だった中京商(現中京大中京)、浪華商(現大体大浪商)、東邦商(現東邦)、松本商(現松商学園)と高校野球(当時中学野球)は商業高校全盛の時代でした。
公立高校でランキングされる高校のうち桐蔭高校、向陽高校は和歌山の高校ですが、なんと箕島高校を含め和歌山県の公立高校3校が公立高校優勝回数ランキングベスト10にノミネートされています。しかも桐蔭、向陽はともに選手権の連覇校です。
昭和後期から平成にかけて和歌山県は私学の智辯和歌山が圧倒的な強さを誇りますが、戦前の桐蔭、向陽高校から春夏連覇校の箕島高校が野球王国和歌山の礎を築いたともいえるでしょう。
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6位の池田高校は、ウェートトレーニングによる肉体改造と金属バットをフルに活用した超攻撃野球で公立高校ながら甲子園の一時代を築いた高校です。攻めだるまと言われた名将蔦(つた)監督により鍛えられたチームは、昭和50~60年代にかけて全国の高校の目標とされました。
8位の小倉高校は、戦後1947年(昭和22年)の第29回選手権大会と翌年第30回選手権大会で連覇を果たしていますが、1回目は旧制中学の小倉中学、2回目は小倉高校として学制改革をまたいでの連覇校となりました。
選手権の連覇校は桐蔭、向陽、広島商、小倉と公立高校4校が達成しています。私立では中京商の3連覇、駒大苫小牧の2連覇の2校のみですので、戦前から戦後あたりまでの公立高校がいかにレベルが高かったかを物語っています。
習志野、津久見高校は両校とも昭和40年代に優勝を達成しています。習志野高校は2019年(平成31年)第91回選抜大会で準優勝するなど今でも甲子園で存在感を発揮していますが、津久見高校は1988年(昭和63年)を最後に甲子園から遠ざかっています。
ここまで甲子園での優勝回数を見てきましたが、優勝に届かなくとも出場回数が多い、甲子園で上位に進出するなど勝利数が多い公立高校の2024年選抜大会終了時点でのランキングもまとめてみました。
順位 | 勝利数 | 校名 | 都道府県 | 春 | 夏 |
1位 | 87 | 県立岐阜商 | 岐阜 | 48 | 39 |
2位 | 80 | 松山商 | 愛媛 | 20 | 60 |
3位 | 63 | 広島商 | 広島 | 20 | 43 |
4位 | 62 | 高松商 | 香川 | 37 | 25 |
5位 | 61 | 高知商 | 高知 | 23 | 38 |
6位 | 46 | 熊本工 | 熊本 | 16 | 30 |
7位 | 45 | 桐蔭(旧和歌山中) | 和歌山 | 13 | 32 |
8位 | 42 | 池田 | 徳島 | 22 | 20 |
42 | 徳島商 | 徳島 | 20 | 22 | |
10位 | 39 | 銚子商 | 千葉 | 14 | 25 |
11位 | 37 | 箕島 | 和歌山 | 24 | 13 |
12位 | 34 | 今治西 | 愛媛 | 14 | 20 |
13位 | 33 | 静岡 | 静岡 | 11 | 22 |
13位 | 33 | 福井商 | 福井 | 14 | 19 |
15位 | 29 | 下関商 | 山口 | 13 | 16 |
1位は戦前から甲子園で勝ち星を重ね、中止になった第92回選抜大会も出場予定だった県立岐阜商となりました。春夏の甲子園出場回数も60回と公立高校で最多、優勝回数も4回で3位タイです。
2位には公立校優勝回数ランキング1位の松山商が80勝、3位には同じく優勝回数2位の広島商が63勝、4位にも優勝回数3位タイの高松商が62勝と続きました。
5位には優勝回数にはランキングされなかった高知商が61勝、高知商は選抜優勝1回、準優勝2回、選手権も準優勝1回と上位進出が多いことで勝利数を積み上げています。
8位タイにも同じく徳島商が42勝とランキング、公立の四国4商が全て勝利数ランキングベスト10に入りました。徳島県は私立高校の甲子園出場が1度もないものの8位タイに池田、徳島商がランキングされています。
6位の熊本工も選手権は準優勝3回と春夏で優勝は1度もありませんが、出場回数43回の古豪として46勝をあげています。
ベスト10に同一の都道府県からランキングされたのは徳島県のみでしたが、愛媛の松山商、今治西、和歌山の桐蔭、箕島は同一県から上位15位に2校ランキングされていいます。
なお優勝回数ランキング8位の習志野は26勝でランク外でしたが、代わりに銚子商が39勝、選手権は優勝1回、準優勝1回、選抜は準優勝1回と勝ち星を重ねベスト10入りしました。
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公立高校の甲子園での優勝回数、勝利数のランキングでは戦前からの古豪の活躍が目立ちましたが、近年でも甲子園で実績を残している公立高校に焦点をあててみました。
明石商業は、明石市立の公立高校ですが、強豪私学がひしめく兵庫県において近年甲子園でも目覚ましい躍進を見せています。
2016年に初出場して以来、2020年の選抜は中止となったものの出場が決定しており、選抜3回、選手権2回のうち2019年は2年生の投打の柱中森投手、来田選手の活躍で春夏ベスト4入りしました。
甲子園の通算勝利数は8勝とまだまだこれからですが、中止となった2020年選抜大会でも優勝候補に挙げられていたでしょう。野球部の甲子園での歴史は浅いですが、今後公立高校の雄として活躍しそうです。
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2018年の第100回選手権大会では、エース吉田投手を擁して決勝戦まで進出、決勝戦では大阪桐蔭に敗戦するも甲子園での躍進ぶり、金農フィーバーは記憶に新しいところです。この時の金足農業は、鹿児島実、大垣日大、横浜、近江、日大三と甲子園常連の強豪私学を撃破しての決勝進出でした。
金足農業は1984年の第66回選手権大会でもベスト4入りしています。この時は準決勝であの桑田、清原選手の2年生KKコンビが主力のPL学園に敗戦しました。この試合も8回まで2-1でリードしていましたが、8回裏に桑田投手に逆転2ランを被弾、直前まで王者PL学園を苦しめた伝説の試合でした。
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2024年選抜大会終了の時点で甲子園で最後に優勝した公立高校が長崎の清峰高校です。10年以上前の2009年第81回選抜大会で優勝を果たしました。以降は甲子園出場がありませんが、2006年第78回の選抜大会でも準優勝しています。
初出場は2005年ですが、選抜2回の出場で準優勝、優勝1回ずつと驚異の戦績です。選手権も3回出場し4勝を全て初戦突破してます。2005年の選手権では、同年選抜優勝の愛工大名電に延長戦で勝利、2回戦は前年の夏準優勝、春優勝の福井投手擁する済美高校に打ち勝つほどの躍進を見せました。
3回戦は平田、辻内の超高校級選手擁する大阪桐蔭に1-4と敗戦しますが、この時のくじ運の悪さは少し話題となりました。しかしそれをはねのける実力はその後の甲子園での活躍を予感させるものでした。
2007年第89回選手権大会の佐賀北高校、1994年第76回選手権大会の佐賀県勢の優勝は衝撃的でした。佐賀商は甲子園の常連校でしたが、それまで優勝経験どころか3回戦進出が最高成績となかなか勝ちきれない時期が続きました。
1994年は開会式後の第1試合で勝利すると決勝戦まで順調に勝ち進みます。そして決勝戦は同じ九州勢の樟南高校との初の九州決戦となりますが、8回に1点差を追いつくと9回表に劇的な満塁本塁打で4点を勝ち越し、そのまま初優勝につなげました。
2007年の佐賀北はさらに衝撃的な勝ち方で、こちらも開会式後の第1試合で勝利、2回戦との宇治山田商(三重)戦では延長15回再試合を制します。以降も3回戦前橋商、準々決勝帝京と強豪校を退け、決勝まで勝ち進みます。
決勝戦の相手は広島の強豪広陵高校で野村投手(広島)、小林捕手(巨人)の後にプロ入りするバッテリーで勝ち上がってきた実力校でした。対戦前の予想も大方が広陵有利という見方通り、8回裏まで0-4と佐賀北が追う展開でした。
しかし8回裏の佐賀北の攻撃は押し出しで1点を返して3点差にした直後、3番副島選手の満塁ホームランが飛び出して5-4と土壇場での逆転に成功します。佐賀北は9回を逃げ切って奇跡の初優勝を成し遂げました。
佐賀県の県立高校によるこれらの優勝は、開会式直後の試合から決勝戦まで一番長い夏を過ごすとともに劇的な満塁ホームランで勝利するという不思議なドラマで幕を閉じました。特に2007年の佐賀北高校は佐賀弁の「がばい(すごい)」旋風として話題となりました。
平成の選手権大会の公立高校の優勝は、松山商とこの佐賀県2校の3校のみです。松山商も奇跡のバックホームというドラマを演じて熊本工との公立高校決戦を制しましたが、公立高校の優勝には劇的なシーンが絡むような印象を感じてしまいます。
かつての戦前の大会では商業高校を中心に公立校が優勝するのは珍しくありませんでしたが、近年の春夏の甲子園大会では公立高校が優勝するケースは少なくなりました。
歴代の甲子園大会ではどんな公立高校が高校野球の名門校、強豪校だったのか?甲子園での優勝回数、勝利数をランキングしてみました。
平成以降では公立高校の優勝は春は観音寺高校(香川)、清峰(長崎)の2校、夏は松山商(愛媛)、佐賀商、佐賀北(佐賀)の3校と圧倒的に私立高校が強い状況が続いています。
グラウンドや設備などの環境面や特待生制度でどうしても不利となってしまう公立高校ですが、令和以降は古豪の復活も含め今後の活躍に期待したいですね。