野球とは、必ず「1選手(投手)対1選手(打者)」の対決が毎回繰り広げられます。
団体スポーツでありながら個人競技の要素が非常に大きいのが最大の特徴です。それ故に伝説の名対決が、プロアマ限らず数多く記録されています。
プロ野球でいえば、古くは金田正一(400勝投手)対新人時代の長嶋(4三振)や天覧試合でも有名な阪神村山対長嶋(サヨナラホームラン)と後世に語り継がれる名勝負、天才打者イチロー対新人の怪物松坂(自信から確信に変わったとのコメント)など多くの個々の名対決が繰り広げられてきました。
サッカーやバスケットボールでも、漫画で例えますとキャプテン翼であれば翼対日向小次郎やスラムダンクであれば流川対仙道など、エース対決という意味では他の球技でも興味深い個々の対決はあります。しかし明確な1対1の対決というのは野球にしかありません。
さらに通常は投手対打者の駆け引きがありますが、時にストレートの真っ向勝負をあえて挑むという対決には武士道に通じるものを感じる方も多くいるのではないでしょうか?(ちょっとオーバーですが)
かつてはオールスターで野茂対落合、与田対清原という速球派新人投手対球界屈指のスラッガーという対決でともに自慢の速球を投げ込み、見事にホームランを打たれたのは見ごたえがありました。
団体スポーツでありながら選手個々の対決がクローズアップされ、時に選手の個性的な投法、打法に注目が集まるのも野球だけの魅力といえます。
表と裏で攻撃と守備が交互に行われることには触れましたが、攻撃と守備の機会が均等に与えられている点も野球の特徴です。
サッカーやバスケ、バレーボールでも攻守交替が頻繁に行われますが、ボールの支配力によって攻守の機会は大きく変わります。
しかし野球の場合は、毎回3アウトになるまで攻撃のチャンスが与えられ、また投手は必ず打者に向かって打てるところ(ストライク)にボールを投げなければいけないという点で攻守の機会が均等です。
もちろん投手力、打撃力による差があるので平等とはなりませんが、このアウトを3つ取ることに守備側は集中し、攻撃側はいかにアウトをとられないか、あるいは1つのアウトをいかに有効に使うかを集中するところに野球の面白さがあります。
それ故に最後の3アウトを取るのに苦労して逆転サヨナラをされてしまうというのも野球ならです。
時間が決められているスポーツならば逃げきれても、野球は最後まできっちり3アウトを取らないと逃げきれないのが特徴です。このことが次のドラマ性にもつながっています。
ドラマ性が特徴とは言うものの、ほかのスポーツにも終了間際の大差の逆転劇や劣勢からの大逆転などのドラマはあります。
しかし多くのスポーツでは1度に入る点数は1点(バスケやラグビーなど違うものもありますが)ですが、野球の場合、満塁ホームランで一挙に4点が入るケースもあれば、エラー、押し出しで1点入るケースなど様々なパターンで得点数も変わります。
2018年の夏の甲子園では秋田県代表の金足農業高校が滋賀県代表の近江高校相手に9回裏1点差で負けていました。
金足農業は、1死2、3塁からスクイズを仕掛け3塁ランナーが生還。まずは同点と思いきや、この時2塁ランナーも一瞬のスキをついて逆転サヨナラのホームを踏みました。
通常スクイズでは3塁ランナーを返して1点を取るのですが、この時は3塁ランナーだけでなく2塁ランナーも一気にホームを陥れました。
野球には点を取るバリエーションが多いという一例でしょう。
ほかのスポーツは試合時間が決まっているものや取得セット数が決まっているものが大半ですが、野球の場合は3アウトを取られないかぎり永遠に攻撃が続きます。
こちらも2016年の夏の甲子園で愛知県代表の東邦高校が青森県代表の八戸学院光星高校に逆転勝ちした例があります。東邦高校は9回裏開始の時点で4点差で負けていた9回にまず1点を返しますが、まだ3点差のところで2アウト。
さすがにここまでかと思われたところでしたが、ここからつなぎにつないで最終的に5点をもぎ取ってサヨナラ勝ちしました。
光星高校からすれば、最後の1アウトをとれば試合終了というところで逆転負け。最後の1アウトをとる難しさを感じたことでしょう。
3アウトをとるまで何が起こるかわからないというのは野球の面白さでもあります。
野球のドラマ性の背景には、団体スポーツでありながら一人の投手がいろんな打者に投げるため、打者によって展開も変わりますし、投手が変わればまた別の展開になることも多くあります。
ここ一番で代打の切り札を送り出すことでドラマが起きることもあります。こういった点が奇跡の大逆転劇、ドラマを起きやすくしています。
プロ野球では先発、中継ぎ、抑えといった分業制が明確で多数の投手を擁しています。特にリードしている場面では、試合の終盤に力のある投手が出てくるケースが多いために奇跡の大逆転というのは起こりにくいのが現状です。
しかしアマチュア野球、特に高校野球ではエースが踏ん張っているにもかかわらず最終回に力尽きて逆転を喫するというシーンは良くあります。まして夏の大会ともなれば酷暑故に力尽きる、あるいは抑えの投手が不在、といった理由で終盤の逆転劇が起きやすくなっています。
個人的な経験でもありましたが、8回まで全く手も足も出なかった相手投手に対して何故か9回にチームが打ち出して3点差をひっくり返したという経験があります。その日は酷暑というわけでもありませんでしたが、投手の疲労なのでしょうか、最後の1回でひっくり返したときはプレイしている自分も半泣きになりながら興奮したものです。
最後まで何が起こるかわからないというドラマ性は野球には多くあります。勝ったチームへの拍手と負けたチームの健闘を称える拍手、こういったシーンは野球でこそ多く見られるのではないでしょうか。
関連ページ:高校野球のタイブレークのルール、ランナーは何人?甲子園での結果は?
野球を始めようとすると用具の多い点に驚きます。
ボール、バット、グラブに始まり、帽子、スパイク、ヘルメット、ミット、マスク、プロテクター、レガーツなど攻守や守備位置でも用具が変わります。
さらにユニフォームだけでなくアンダーシャツ、ストッキング、ベルト、ソックスから最近ではバッティング用グラブ、エルボーガードや打者用レガーツなどアマチュアでも多く使用されており、こと用具に関してはほかのスポーツにないくらい多様です。
一方で用具を揃えるのにお金がかかるという点はデメリットでもありますが、これらの用具に憧れて野球を始める人や用具にこだわる人もいるでしょう。
僕自身も何故かわかりませんが、アンチジャイアンツだったにも関わらず子供のころはジャイアンツ原辰徳選手モデルのグラブを使用していました。すごくかっこよかったんですね。暇さえあればグラブを手にはめていた記憶があります。
大人になってもグラブとかバットをつい手にしたくなる、思い出の用具があるというのは野球ならではないかと思います。
関連ページ:野球の用具一式とその特徴。それぞれの用具の名前と意味をおさえて1日も早く上達しよう!
野球用語も特徴的です。元々はアメリカから伝わってきた野球ですが、日本語の用語には死球、盗塁、捕殺、刺殺、犠牲バントといった少し野蛮な言葉も含まれています。またサヨナラ、ゲッツー、野選、トンネル、振り逃げといった独特の表現も多様です。
さらに不思議なのはピッチャーから向かって右側に立つ打者が右打者なのに対し、外野の守備位置は反対側が右翼(ライト)と呼ばれるのもなんだか不思議です。ショートのことを遊撃手と呼ぶのも面白いですね。諸説あるようですが、少し軍隊的な感じがあるのも野球の歴史の深さを感じます。
また左投手をサウスポーというのも野球だけではありませんが、元々は野球場の作り上、左投手の左手側が南側(SOUTH)ということから来た語源という説があり、ボクシングでも左利きのことをサウスポーと呼ぶというのも野球がルーツだからではないでしょうか。
さらに特徴的なのは、特殊なルールが多いという点です。代表的なルールを以下に挙げます。
通常、打者が打ち上げたフライを捕れば1アウトでランナーは基本的に進塁できませんが、2アウトでなければ野手が捕球した後はいったん帰塁した後ならば進塁することができます。
もちろんランナーが刺されればアウトになるので、ランナーは簡単に進塁を試みません。
また通常打者がファウルを打った時はランナーは進塁できませんが、ファウルフライの場合はタッチアップが許されています。このあたりもルールの複雑さを感じますね。
普通、ツーストライクから打者が空振りもしくは見逃ししてストライクとなれば三振で1アウトとなると思っている方は多いでしょう。
しかし正確にはキャッチャーがノーバウンドで捕球できなければ、三振ではありますがアウトにはなりません。
この場合は打者にタッチするか、一塁へ送球してアウトにしますが、アウトカウントによってそのルールが変わります。
2アウト以外で1塁に走者がいる場合は、タッチや送球しなくても自動でアウトになりますが、2アウトの時は打者をアウトにするかほかのランナーをアウトにしないと3アウトとなりません。
これも独特のルールです。2アウト以外で走者が1,2塁もしくは満塁の時に内野にフライが上がった場合に、審判が「インフィールドフライ」を宣告すると打者はその時点でアウトとなります。
走者は内野にフライが上がった時点で基本進塁しようとしませんが、野手がわざとフライを捕らなかった時に、1塁が埋まっていると走者は慌てて進塁せざるをえなくなります。
1,2塁のケースでは、慌てて走り出した走者が2塁でアウトになり、その後1塁へ送球されて打者もアウトになることが起こります。こういったプレーを防ぐために設けられたルールです。
ただ審判が宣告して初めて成立するルールですので、内外野の境界くらいに上がったフライですと宣告しないケースもあり、その場合は進塁できるのか塁にとどまるのか判断が難しいこともあります。
また1塁にしか走者がいないときは適用されないので(落球しても打者走者が入れ替わるだけ)、送りバントの小飛球などでは野手がわざと捕球せずに、慌てて進塁を試みたランナーを刺すために2塁へ送球して、打者走者を1塁で刺すというダブルプレーをとるケースもあります。
これもまた複雑なルールがあります。元々は投手の投球動作を規定したもので、打者や走者に不利にならにようにしたものです。打者を惑わすような投げ方や、走者が盗塁することを妨げないようにしたものですが、いろんな規定があります。
主なものでは
などです。
これら以外にも打撃妨害、守備妨害、故意落球、最近ではコリジョンルールなど特殊的なルールが野球には多く、アマチュアの指導者、監督やプロの選手でも間違えているケースもまれにあるくらいです。
これらのルールを覚えれば、相手選手がルールを知らずにプレーしたためにアウトにすることもできますし、観戦においても「あ、この選手はルールを熟知していないな」などと勝手に評論家気分で楽しむこともできます。
年齢を問わず草野球を楽しむ方が多いのも特徴です。これは攻守交代がある故に投手以外は比較的休んでいる時間が多いから中高年の方でもそんなに体力を使わないでできるということも言えるでしょう。
最近では女子野球も盛んになってきてますが、ボールも小さく、時に接触プレーもあるスポーツですので安全面の心配もあるものの、プロ女子野球では男性顔負けのプレイで多くの観客を魅了しています。
このように子供から中高年、女性もが楽しめるスポーツという点でも野球はメジャーなスポーツです。そしてプロ野球のみならず大学、高校野球などアマチュア野球も多くの方が観戦を楽しんでいることから、大きなエンターテインメントとして100年以上も日本のメジャースポーツであり続けています。
以上、野球の特徴をご紹介しましたが、いかがででしょうか。すでに知っていることもたくさんあるかもしれませんが、改めて知るとさらに野球をしてみよう、観戦してみようという気持ちになりませんか?
野球の特徴は
という点は野球だけの魅力です。老若男女が楽しめるスポーツとして長らく日本で愛され続けている原点といえるのではないでしょうか。