かねてから議論されてきた高校野球での球数制限ですが、いよいよ来春2020年のセンバツ甲子園での導入が決定的となりました、今回提言された球数制限とはどんなものでしょうか?
甲子園大会の場合、この1週間に入る最多の試合数は夏の甲子園では3回戦から決勝戦までの4試合が最多となります。2019年の夏の大会では継投も増えているため、今回の制限に該当する投手はいませんでした。
来春の2020年センバツ大会から導入し3年間は準備やデータを検証する期間と位置づけるとのことですが、センバツの場合は2回戦から決勝までの4試合が1週間に入る最多の試合数となります。2019年のセンバツでも該当する投手はいませんでした。
これまでの有識者会議では、球数制限以外にも様々な意見があがりました。特に以前から問題視されていた金属製バットの高い反発性の見直しにも言及され、高野連は「飛ばないバット」の導入に着手することになりました。
金属製バットによる打撃優位の環境を変えることで投手の障害予防につなげることも狙いです。2019年の夏の甲子園でも投手が顔面に打球を受けて頬骨を骨折したこともあり、金属バットの高い反発力の影響によるものと考えられていました。
飛ばないバットとは木製バットに近く、最大径を現行の67ミリから64ミリに減少することなどが案として挙がっています。細くすることで反発係数が下がり、試算によると飛距離は5%落ちるということです。ちなみに現在の規定では最大直径67ミリ、重量900グラム以上となっています。
また国際大会でも木製バットの使用規定があるため、日本のU18選手が国際大会での対応に苦労するケースも課題でした。このため世界基準のバットの必要性が指摘されていた点も「飛ばないバット」導入の一因となっていたようです。
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球数制限と飛ばないバットの導入により高校野球はどう変わるのでしょうか?早速見ていきましょう!
まず球数制限は「1人の投手が投げられるのは1週間に500球まで」という制限と「3日連続の投球禁止」という制限が設けられました。
地区予選や甲子園でも勝ち進むとベスト16から準々決勝、準決勝、決勝へ進むにつれ勝ち残る学校数も少なくなるため、従来通りではベスト16から準々決勝が連戦、休養日を挟んで準決勝、決勝も連戦というパターンの場合、5日間で4試合という過密日程になることもあります。
エース一人で全試合を投げ抜こうとしてもこの過密日程では少なくとも1週間で500球は軽く超えてしまいます。この制限を回避するならば、最低限2人以上のエース級を抱える必要があります。
強豪校でも最近は珍しくなくなってきましたが、継投による投手起用が主流となってきます。背番号10番の投手が先発、中盤から背番号1番の投手が終了まで投げるようなパターンがさらに増えるでしょう。一方でエースによる完投は減っていくことになります。
しかし、そもそも各校ともエース、控えを含めて投手3~4人はベンチ入りしています。強豪校ともなればエース級の投手が複数いることが当たり前となりましたが、普通の公立校などはエース級と控えの投手では力に差があるケースが大半です。
甲子園に出場するような高校は複数投手を抱えているケースも多いのであまり問題にならないかもしれません。さらに休養日の関係で甲子園で3連戦になることは雨天順延の影響がない限り可能性は低いでしょう。
しかし地区予選では、予選の序盤は試合間隔が空くので球数制限を受けることはありませんが、勝ち進むにつれてエースが登板できないケースが出てきます。そうなるとエースより力の劣る控え投手が登板せざるをえません。当然、試合に勝てる確率も下がります。
複数のエース級投手を抱える高校とそうでない高校とで不公平になりかねません。こういった点から球数制限を議論するときに必ずこの不公平さが問題となってきました。
この不公平さを解消するには地区大会の日程を緩和する必要があります。
地区大会、予選などは勝ち進んでいくうちに徐々に試合日程が過密になっていきます。
甲子園の開幕が8月上旬の場合、甲子園出場が決定してから準備期間として1週間を空けようとすると遅くとも7月29日頃までには地区予選の決勝を終える必要があります。この場合、特に夏休み前の平日に試合を開催しない都道府県の場合、7月20日ころから夏休みに入って以降、集中して予選を消化していくことになります。
今回の1週間で500球、3日連続の登板をできるだけ回避するならば、例えばベスト16から準々決勝に2日、準決勝、決勝の間に1日ずつそれぞれ休養日を設ける必要があります。
日数 | 日程 |
1日目 | ベスト16 |
2日目 | 休養日 |
3日目 | 休養日 |
4日目 | 準々決勝 |
5日目 | 休養日 |
6日目 | 準決勝 |
7日目 | 休養日 |
8日目 | 決勝 |
このような日程にすれば1週間でも最大3試合、1試合160~170球までは投球が可能です。ただしベスト32からベスト16までは最低3~4日は空いていることが前提です。
ただし雨天による中止などの予備日を考慮すると夏休み以降にこのような日程で消化するならば、夏休みに入った時点でベスト16が決まっているくらいの日程にする必要があります。
土日祝日で予選を消化するならば参加校数が100校以上の都道府県では、ベスト32の4回戦を夏休み前の7月中旬の3連休、その1週間前の7月上旬の土日で3回戦と逆算していくと6月中旬から1回戦を2週間にわたって消化することになるでしょう。
シカゴカブスのダルビッシュ投手がツイッターで提唱していたように春季大会をやめて予選を早めればよいというのもこういった過密日程を解消するための一案だと思います。個人的には春季大会は貴重な公式戦ですので、やめる必要はないかと思いますが。
上記の日程案はあくまでも一例ですが、できるだけエースの投球機会を増やして強豪校とそうでない高校との不公平さを解消するならば予選の日程を緩和する必要があります。また投手の登板過多を避けるためにも有効だといえます。
これは飛ばないバットによる影響も大きいですが、球数制限による過密日程が解消されれば当然投手の疲労も減りますので打撃戦が減ることが予想されます。打撃戦が減れば投手の投球数も減るので、投手の消耗も減るでしょう。
しかし一方で点が入りにくくなると投手戦が増えることになります。投手戦が増えると延長試合も増える可能性が高まります。延長戦が増えればかえって投球数も増えることになるのではないかと思いますが、延長13回からはタイブレークが行われますので(タイブレークについてはこちらを参照)延長回数もいたずらに増えることにはならないでしょう。
もっとも飛ばないバットの影響でタイブレークでも点が入りにくいということもあるかもしれません。試合全体でも点が入りにくくなれば当然戦術も変わってくるでしょう。
最近の高校野球は、かなり打撃重視で送りバントもしない高校も増えてきました。1、2点を取って守り抜くよりも打って打ってとにかく点を取りに行く野球が主流となりましたし、夏の甲子園で優勝するチームも打撃力のあるチームが多くなっています。決勝戦での乱打戦も珍しくありません。
しかし飛ばないバットの影響で乱打戦や本塁打、長打が減ることが予想されます。そうなると確実に1点を取りに行き守り抜く野球、スモールベースボールが重要視されるかもしれません。
走者が出ればバントで送る、足を使った機動力で揺さぶる、スクイズで1点を取る、また守る方もエラーを減らす、バント阻止やバントシフトを強める、けん制など無駄な走者を出したり、走者を先の塁に行かせないよう守備力を鍛えるでしょう。
飛ばないバットは反発係数を見直すということですので木製バットなみの低反発力となるのかは不明ですが、野球の質が変わるかもしれません。
飛ばないバットに対応するため、打撃技術を向上させることが重視されるでしょう。反発係数の高いバットでは、多少芯を外れても打球を遠くに飛ばすことができます。しかし飛ばないバットではきちんとしたスイングで球をとらえないと力強い打球が放てません。
木のバットと金属バットとの違いは、反発力と芯の広さです。木のバットは芯が狭くきちんと芯でとらえないと打球は飛びません。飛ばないバットも今より芯が狭くなるのかは不明ですが、反発力が減る分木製同様きちんととらえる必要があります。
上半身や腕力だけに頼ったスイングではなく、下半身主導で腰の回転でバットを振るといった力強いスイングが求められるでしょう。また今まで以上にバットの芯でとらえるようミート力も必要となります。
こういった技術が向上すれば、国際大会での木製バットへの対応もしやすくなるのではないでしょうか?少なくとも木製バットに戸惑うことがなくなれば、国際大会での日本代表の得点力は明らかに増すでしょう。
高校野球でもいよいよ2020年のセンバツ甲子園大会から球数制限が導入されることとなりました。同時に飛ばないバットの導入も検討されることとなりました。この球数制限と飛ばないバットとは
といった制限が設けられたことによるものです。
この結果、高校野球でもいくつか変わることが考えられます。
といった点に影響を及ぼすのではないでしょうか?国際大会ではすでに導入されている球数制限ですが、木製バットへの対応も見据えて改善されるのは良いことではないでしょうか?何よりも未来のある投手が登板過多、投球数過多による故障を防ぐことができるのであればこういった改革はどんどん取り入れるべきでしょう。
今後高校野球がどのように変わっていくのか見守っていきたいと思います。