2020年の交流試合で白いスパイクを履く選手たちが目立ちました。今まで何気なく見ていたものの何となく雰囲気が変わったとお気づきの方もいるのではないでしょうか?なぜ今大会から?導入の目的は?について見てみましょう!
元々高校野球の使用する用具には高野連が規定を定めています。高校野球部であれば従わなければならないルールですが、思ったほど細かくは決まっていません。ユニフォームについては色に関する規定はありませんが、上着とズボンの色が異なるツートンカラーを禁止している程度です。
ただしユニフォームには校名、校章、都道府県名、地名の表記までしか認められていません。グラブやバットなど購入時点でスポーツメーカーのロゴが入っているものは大丈夫ですが、プロ野球選手のようにチームのトレードマークやスポーツメーカーのロゴといった商売に直結するようないわゆる商標は禁止されています。
つまりマークやロゴさえ気を付ければユニフォームの色については比較的自由に選べます。もっとも真っ赤だったり真っ黒なユニフォームを選択する高校もないとは思います。
しかしユニフォームの規定が緩いのに反してスパイク、ベルト、ヘルメットについては色の規定があります。スパイクは黒の単色のみ、ベルトは黒または紺、ヘルメットは白、黒、紺となっています。
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今回の交流試合から白いスパイクを見かけるようになりましたが、この規定が見直されました。いつから着用可能になったのでしょうか?
スパイクは黒の単色のみに限るという規定でしたが、昨年5月の理事会で白いスパイクの使用を認めることを高野連が決めました。このため規定は「表面カラーはブラックまたはホワイト一色とする」と見直され、今春の公式戦から使用が認められるようになりました。
この白スパイク導入の目的は暑さ対策で、熱を吸収しやすい黒のスパイクでは熱がこもりやすいため黒よりも温度が上がりにくい白色のスパイクの使用を認めるようにしたものです。
それまでも国際大会では他国の選手が白いスパイクを使用していることに日本高野連は目をつけていたところに、各地の高校野球指導者から暑さ対策に使用を認めるような声も上がっていました。
実際にスポーツメーカーが温度の上昇具合を比較したところ、白のスパイクの方が黒のスパイクより表面、内側ともに10度低いという結果になったそうです。今春の公式戦から使用が認められていましたが、新型コロナウイルスの影響で選抜甲子園大会を始め春の公式戦も中止となりました。
このためこの夏の交流試合が初の公式戦での使用となり、甲子園で着用する高校が目立つようになりました。選手の感想も「白の方が涼しく感じる」「蒸れなくてよい」「足が軽い印象で走りやすい」といった高評価ばかりでした。
甲子園球場のグラウンド内の暑さ対策、特に近年では酷暑による熱中症対策は甲子園のみならず夏場に開催する高校野球の課題でもあります。さらに投手の故障予防のために球数制限も導入され、交流試合では甲子園のバックスクリーンに球数の表記がされるようになりました。
選手の安全、故障予防のために少しづつ前進しているように思います。高校野球ファンにとって日本の春と夏の風物詩である甲子園大会が「選手ファースト」で改善されていくのは素晴らしいことだと思います。
この高校野球甲子園交流試合ではかなり多くの高校が白スパイクを着用している印象でしたが、果たして何校が導入したのでしょうか?熱中症予防が果たして試合結果に影響を及ぼしたのか?気になったので調べてみました。(赤太字が勝利チーム)
白スパイク | スコア | 黒スパイク | ||
明徳義塾 | 高知 | 6-5 | 鳥取城北 | 鳥取 |
天理 | 奈良 | 2-4 | 広島新庄 | 広島 |
明豊 | 大分 | 4-2 | 県岐阜商 | 岐阜 |
智辯学園 | 奈良 | 3-4 | 中京大中京 | 愛知 |
鹿児島城西 | 鹿児島 | 1-3 | 加藤学園 | 静岡 |
桐生第一 | 群馬 | 2-3 | 明石商 | 兵庫 |
大阪桐蔭 | 大阪 | 4-2 | 東海大相模 | 神奈川 |
智辯和歌山 | 和歌山 | 1-8 | 尽誠学園 | 香川 |
白スパイク校対黒スパイク校の対戦カードは8試合、すなわち8校が白スパイク校でした。このカードの勝敗は黒スパイク校5勝、白スパイク校は3勝と黒スパイク校が勝ち越しました。
地区別では近畿勢4校、九州勢2校、関東勢1校、四国勢1校が白スパイク校でしたが、東海勢3校は全て黒スパイク、中国勢2校、近畿勢1校、関東勢1校、四国勢1校も黒スパイクと近畿地区の白スパイク率が高いのに対して東海勢、中国勢は黒スパイク率が高い結果となっています。
なお奈良県の天理、智辯学園の2校は白スパイクでしたが、2校とも敗戦しました。当たり前と言えば当たり前ですが、白スパイクになって履き心地が良いからといって有利だと言えるほどの結果にはなりませんでした。
白スパイク | スコア | 白スパイク | ||
創成館 | 長崎 | 4-0 | 平田 | 島根 |
帯広農業 | 北海道 | 4-1 | 健大高崎 | 群馬 |
鶴岡東 | 山形 | 5-3 | 日本航空石川 | 石川 |
白スパイク校同士の対決は3カードありました。暑さ対策に苦労する北海道、東北勢が勝利をあげていますが、白スパイクが好影響を与えたのかは因果関係までははっきりしません。
群馬県からは桐生第一、健大高崎の2校とも白スパイクと奈良県、群馬県は県の強豪校が白スパイクということで県内ではどんどん白スパイクを導入する高校が増えるかもしれません。21世紀枠の平田は中国勢唯一の白スパイクと流行を先取りしていますが、善戦むなしく白スパイク校創成館に敗戦しました。
黒スパイク | スコア | 黒スパイク | ||
花咲徳栄 | 埼玉 | 3-1 | 大分商 | 大分 |
履正社 | 大阪 | 10-1 | 星稜 | 石川 |
国士館 | 東京 | 4-3 | 磐城 | 福島 |
倉敷商 | 岡山 | 6-1 | 仙台育英 | 宮城 |
山梨学院 | 山梨 | 8-3 | 白樺学園 | 北海道 |
九州勢からは唯一の大分商が黒スパイク校、北海道、東北勢の黒スパイク校は3校とも敗退、近畿勢は明石商とともに黒スパイク校だった履正社は明石商とともに勝利しています。
以上より地区別では、九州勢4校中3校、近畿勢6校中4校が白スパイク校と白スパイク率が高く、一方東海勢3校全校、中国勢4校中3校、東北勢3校中2校、関東・東京勢は群馬2校以外の4校が黒スパイク校と黒スパイク率の高い地区となりました。
この結果からもスパイクの白黒での優劣はありませんでしたが、北海道・東北勢は白スパイクの2校が勝利、黒スパイクの3校が敗戦と明暗が分かれました。今回の交流試合では白スパイク校14校、黒スパイク校18校とまだ黒スパイク校が多い結果となりましたが、白スパイク導入はどんどん進むかもしれませんね。
2020年の高校野球甲子園交流試合から白スパイクを使用する高校が現れました。スパイクの規定はいつから変わったのか?導入の目的は?交流試合の出場校はどれくらい導入して、試合結果には影響を与えたのか?について見てきました。
以上のように白スパイクがパフォーマンスに大きく好影響を与えたというほどの結果があったわけではありませんが、選手の評判からも暑さ対策にはかなり有益だったと言えそうです。
甲子園に出てくる強豪校が使用することで全国にも一気に白スパイクの導入が広がるのではないでしょうか?年々、猛暑が深刻になっているように感じてきますが、選手ファーストでルールや用具の規定が良い方向に変わっていくのは良いことですね。
選抜、選手権や公式戦が相次いで中止となり、加えて新型コロナ対策に熱中症対策と今年の球児は本当に大変な時期を過ごしました。試合後の監督、選手のインタビューは皆さんが殊勝な言葉で謝意を表したことには頭が下がります。
大変な状況で前を向いて挑んだ球児たちと監督、保護者、学校関係者それに交流試合を開催した高野連、朝日・毎日新聞社、甲子園球場の関係者には敬意を表したいです。