米大リーグでは、試合時間の短縮を求めこの打者3人との対戦の義務化について2019年2月に、大リーグ機構と選手会で議論されていました。投手交代は試合進行を遅らせるため、試合進行を速めるのに有効となるでしょう。
米大リーグでも試合時間は長くなる一方で、2019年は9イニングの試合では平均時間3時間5分と史上最長の試合時間となりました。この平均時間はここ20年で10分伸びており、ここ50~60年では1時間も長くなったというデータもあります。
一方でアメリカのとあるメディアでは、このワンポイントを制限するルールでは試合時間の短縮にはあまり効果がないという報道もされています。むしろ投球間の時間が2.9秒増えたというデータもあり、投球間の時間を制限することの方が有効だというものです。
確かに頻繁な投手交代は試合時間を間延びさせることも否定できません。ですが、戦略、戦術としてのワンポイントリリーフを制限するのはどうかなと思います。もちろん実際に日本のプロ野球を見ていてもやたら投手交代をして試合時間が伸びるように感じることはあります。
ですが、それ以上に投球間に捕手のサインとのやり取りで時間がかかったり、打者もベンチやコーチのサインを見たり1球ごとに打席を外すなど時間がかかっている場面も多いかと思います。
もっと言えば試合時間が長くなって何が悪いのか?とも思います。と言っても平日のナイター観戦で6時に試合開始して10時ころ試合終了ともなるとちょっとうんざりしないわけでもないですが、せっかくの球場観戦があまり淡泊に終わってしまっても物足りない気にもなります。
ただここ一番での勝負所でワンポイントリリーフと強打者との勝負は見ごたえがあるのではないかと思います。ベンチワークも野球の醍醐味ではないでしょうか?
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試合時間をスピーディーにすることには異論はありませんが、野球の醍醐味までなくしてしまってまで、しかも時間短縮にそこまで有効でないならあえて導入することもないのではと思います。
逆に3人投げ切るまでに相手打者を抑えきれず点をとられまくった場合は、むしろ時間もかかってしまうし緊迫したゲームも台無しにしてしまいます。画一的な導入には慎重になってほしいですね。
もしワンポイントリリーフが禁止となると、各球団のワンポイントリリーフ投手、とりわけここ一番の勝負どころの切り札でもある投手の反応はいかがなものでしょうか?
日本のある球団の左投手の意見ではこれにはむしろ歓迎のようです。ワンポイントでのリリーフとなると、打たれることはもちろんフォアボールさえも許されません。一人の打者だけを抑えに行くプレッシャーはそれはそれで半端ではなく、むしろ1イニングを任される方がやりやすいということです。
ワンポイントリリーフ専門の投手にとって自分の仕事場を失うリスクよりもトータルで実力を発揮できるメリットの方が大きいようです。
見ているほうからしてもほぼ完ぺきに抑えることを期待しているので、いざ打たれるとショックも大きいです。それだけ投げる方は相当なプレッシャーはあるでしょう。意外に見ているほうよりも当事者の方が歓迎なのかもしれませんね。
それでもプロなのでここ一番の切り札の登場にはやはり期待してしまいます、ワンポイントリリーフが禁止となれば現場の指揮官、首脳陣には悩ましい問題になるでしょう。
日本プロ野球の史上最高のワンポイント投手と一口に言ってもいろんな投手がいましたが、それぞれの世代でも思いつく投手はさまざまでしょう。
個人的にはやはり印象度でもナンバー1は阪神タイガースの遠山奨志投手です。ジャイアンツでバリバリだったころの松井秀喜選手に対して、ここ一番でワンポイント登板しことごとく抑えていたイメージがあります。1999年には松井選手との対戦成績は13打数無安打と完ぺきに抑えました。松井選手も顔も観たくないというくらいの苦手投手でした。
次に挙げられるのは西武ライオンズの永射保投手です。主に1980年前半に西武で活躍しましたが、当時のロッテのレロンリー、日ハムのソレイタといった外国人強打者に対してワンポイント登板が多く、やはり顔を見るのもいやといわれるほど苦手としていました。
また大洋ホエールズの平岡一郎投手は、1960年後半に活躍した投手であの世界の「王キラー」としてワンポイント起用されていました。王選手との対戦成績は50打数13安打とヒットはそこそこ打たれていますが、何と被本塁打は0本とおさえています。あの王選手にホームランを打たれていないだけでもすごいのではないでしょうか。
近年の印象では、中日の小林正人投手、阪神の高橋聡文投手、ソフトバンクの森福投手も左のワンポイント投手として活躍した投手ではないでしょうか?
いずれの投手も共通なのは左のサイドスローという点です。これは左打者にとって対戦数がもともと少ないタイプな投手なうえに、背中からボールが来るイメージのためインコースのボールにはのけぞってしまったり、アウトコースのボールに腰がひけてしまうといういかにも打ちにくいタイプのようです。
特に歴代でワンポイントとして実績のある投手は、王選手、松井選手や強力外国人助っ人といった並み居る左の強打者を相手にきっちり仕事を果たすだけあってよほど打ちにくかったでしょう。
このような仕事人と称される左のワンポイントリリーフがもしかして球界から消えてしまうというのはやや寂しい気もします。試合時間の短縮という理由だけでなくなるのはもったいないですね。
2020年から米大リーグで「救援投手は打者3人以上と対戦するか回が終了するまで投げ切る」というルールが導入されることが決まりました。日本プロ野球でもこの米大リーグでの改正を受けてこのルールが導入される可能性が出てきました。
このルール導入の目的は試合時間の短縮のためということですが、試合時間の短縮にはこういった制限よりも投球間の時間を短縮した方が有効という意見もあります。ここ一番での野球の醍醐味であるワンポイントリリーフが消えてしまうのはもったいないのではないでしょうか?
日本プロ野球の歴史でもいろんなワンポイントリリーフ投手が存在しました。史上最高のワンポイントリリーフ投手とは
が候補に挙げられるのではないでしょうか?これらの投手に匹敵するようなワンポイント投手は今後現れるのか?ルール上存在しなくなるのか?さらにこのルールが導入された場合、プロ野球の戦術もどう変わっていくのでしょうか?非常に気になるところです。