正式名称は「全国高等学校軟式野球大会」、硬式と同じく日本高等学校野球連盟が主催するれっきとした野球大会です。後援には朝日新聞社、毎日新聞社、全日本軟式野球連盟が名を連ねます。
しかし硬式野球部の加盟校数が約3,800校あるのに対して軟式野球部は約380校と硬式野球部の10分の1です。硬式野球に比べて注目度が低いのは仕方ないかもしれません。
全国大会への参加校は都道府県から1校ずつではなく、16に分けられた地区から1校ずつの計16代表で競います。7月から8月上旬にかけて都道府県大会、地区大会の予選を行い、8月下旬から夏休みが終了するまでに全国大会を開催します。
なお夏休みまでに決勝戦までの全日程が終わらない場合は、優勝預かりで両校準優勝扱いとなります。過去1回だけ事例があり、1968年の第13回大会の下関商業と静岡商業の決勝戦が延長18回で決着がつかず両校準優勝となりました。
地区割は、北海道、東京、大阪、兵庫から1校ずつ計4校、残りは東北、関東、九州の各地区を南北の2地区、中国を東西の2地区から計8校、北信越、東海、近畿、四国から1校ずつ計4校の合計16地区となります。
軟式野球部が偏在しているためこのような地区割となり、三重県、沖縄県は全国大会への出場経験がありません。
全国大会の会場は、現在は甲子園より少し西に位置する兵庫県明石市の県立明石公園第一野球場(明石トーカロ球場)と姫路市のウィンク球場で開催されます。1回戦、準々決勝は両球場、準決勝以降は明石トーカロ球場で行われます。
第1回大会は1956年に開始、2024年で第69回を迎えます。106回を数える甲子園大会に比べればまだ歴史は浅いですが、それでも70年近い歴史のある大会です。開催球場も、過去には藤井寺球場、PL学園球場、高砂市野球場と変遷してます。
歴代優勝校の顔触れも様々です。それではどんな高校が頂点に立っているのか、見ていきましょう。
軟式野球大会ですが、過去の優勝校の顔触れや上位進出校を見る限り、硬式野球の甲子園大会でもお馴染みの高校が歴史に名を刻んでいます。2023年大会終了時点での優勝回数上位校は以下の通りです。
優勝回数 | 校名 | 都道府県 | 達成した年 |
12回 | 中京 | 岐阜 | 1991年、1996年、1998~1999年、2011~2012年、2014年、2017~2019年、2022~2023年 |
10回 | 作新学院 | 栃木 | 1986年、1989~1990年、1994~1995年、2006年、2008~2009年、2015年、2021年 |
6回 | 龍谷大平安 | 京都 | 1959~1961年、1963年、1969年、1976年 |
3回 | 広陵 | 広島 | 1977年、1988年、2000年 |
2回 | 中京大中京 | 愛知 | 1958年、1965年 |
静岡商業 | 静岡 | 1979~1980年 | |
能代 | 秋田 | 1982年、2010年 | |
大津 | 山口 | 1981年、2003年 |
※2020年第65回大会は新型コロナ感染症により大会中止
2回以上の複数回優勝している高校は上記の8校で計33回と大会開催数の半分以上を占めています。上位の顔触れを見ても甲子園でお馴染みの高校ばかりです。
特に驚きなのは、12回で最多の中京(前中京学院大中京)と10回で2位の作新学院は、2019年第101回夏の甲子園でも準々決勝で対決しています(中京の勝利)。
さらにこの両校の初優勝は中京が1991年第36回、作新学院が1986年第31回と比較的遅めでしたが、以降驚異的な強さで優勝回数を重ねています。
上記の高校以外にも、早稲田実業(1957年)、慶応(1964年)、北海(1966年)、県立岐阜商業(1974年)、松山商業(1987年)、育英(1997年)、PL学園(2001年)、仙台育英(2002年)、天理(2016年)など甲子園の常連校も優勝しています。
一方で、岩瀬農業(岩手、1970年)、口加(こうか、長崎、1971年)、三重農業(大分、1975年)、飾磨工業(兵庫、1978年)、河浦(熊本、1983年)、四日市(大分、1992年)、新見(岡山、2007年)といった甲子園ではあまり名前を聞かない高校も優勝校になっています。
三重県からは出場経験はないのですが、上記の三重農業、四日市はあたかも三重県の高校かと錯覚してしまいます。ちなみに三重県の四日市高校は夏の甲子園で優勝経験があります。
軟式野球大会ならではのエピソード、記録もあります。以下に紹介します。
先にも触れましたが、2014年第59回大会の準決勝では中京学院大中京対崇徳戦が延長50回まで死闘を繰り広げました。当時の大会規定では、延長は15回まで戦い決着がつかない場合は、翌日に延長16回から開始、点差がついた時点で試合終了となるルールでした。
しかし2日目も15イニングで決着つかず(延長30回)、翌日3日目も15イニング同点(延長45回)のまま、翌日4日目の5イニング目に中京学院大中京が3-0と勝ち越して延長50回で決着がつきました。
2日目終了時点で話題となり、3日目、4日目は球場にも多くの方が足を運びました。4日間に及ぶ熱戦は当時いろんなメディアで取り上げられまだ記憶に新しいところです。
こちらも先に触れていますが、1968年第13回大会の決勝戦では下関商業対静岡商業が延長18回で決着がつかず、この日9月1日が夏休み最終日だったため、規定通り優勝預かりとなり両校準優勝という措置が取られました。
この年の甲子園大会は第50回記念大会で48校が出場、全試合を甲子園で開催、さらに雨天順延により予備日をすべて消化してしまったため、この影響から軟式野球大会の開催期間にも影響を及ぼしたことが背景にありました。
しかしこのエピソードには続きがあり、29年後の1997年に静岡商業50周年行事として当時の選手が集まって記念試合を行い、12対6で静岡商業が勝ちました。
硬式野球大会の甲子園では絶対にありえない規定ですが、日程優先の軟式大会ならではのエピソードです。
高校野球といえばやはり硬式が主流でしょう、全国でも硬式野球部が約3,800校あるのに対して軟式野球部はその1割の約380校にしかすぎません。さらに日本中の注目をあびる甲子園大会は硬式野球です。
しかし軟式野球でも全国大会レベルとなれば相当高い技術を持った選手がいるのも事実です。そういった選手たちがなぜ軟式野球を選ぶのか、その理由はいくつかありますが、主な理由は
といった理由があるようです。
かなり野球がうまくても甲子園常連校に入部してもレギュラーになるのも困難ですし、甲子園出場自体がかなり険しい道のりですのでいっそのこと軟式でエンジョイするというのも理由としてはあるでしょう。
それでも全国大会に出場して活躍すれば進学や就職に有利になることもあります。硬式ではちょっと自信がないけど軟式でなら全国大会にもレギュラーとして行けるような技術のある選手もいます。
野球を楽しむ理由は人それぞれです。軟式で高校野球を楽しむのも大いにあってよいのではないでしょうか?
夏の甲子園大会が終了してから開催される全国高校軟式野球大会は、日本高野連主催のれっきとした全国大会ですが、硬式の高校野球に比べると加盟校数も10分の1とかなりマイナーなイメージがあります。
など軟式野球大会の独特の魅力や面白さについてご紹介してきました。
甲子園大会が終了した残り少ない夏休みを全国高校軟式野球大会で楽しむというのはいかがでしょうか?開催日数も短く参加校数も少ないですが、全国の強豪が集う全国大会は面白いはずです。入場料も無料ということですので、兵庫県に足を運ぶ機会があれば是非観戦してみてください!