新型コロナウィルスの影響で予定通りの開催が危ぶまれている東京五輪、パラリンピック。東京五輪は当然子供たちの関心も高く、各教科書にも東京五輪に関する記述が多く盛り込まれています。
対象となる教科は国語、数学、社会科、保健体育など中学用の教科書9教科33点にものぼります。世界中が注目するイベントでもあり、過去の大会で活躍した選手や大会の理念といった取り上げ方もされます。
例えば、数学では大会のエンブレム「組市松紋」のデザインを形の異なる四角形を組み合わせた構造を数学的な視点から解説されたり、社会科の地理では国立競技場が建て替えられて、関連施設が集まる臨海部の景観が一変する様子や東京一極集中についての議論する記述がされています。
技術では新国立競技場の建築技術と持続可能な社会について考える内容が記載されるなどほぼすべての強化で東京オリンピック・パラリンピックの話題が取り上げられています。
こういった教科書に記載されている記載内容は全て「2020年」に開催される前提となっています。
例えば「2020年日本では2回目となる夏季大会が開催」といった記述や、「2020年オリンピック・パラリンピック大会を振り返ってみよう」というコーナー、「TOKYO2020」と記載されたエンブレム画像などは全て「2020年」という記載がされています。
大会名は「東京2020」のままになりそうなのでエンブレムはそのまま採用されるでしょうが、開催時期は2021年となります。
東京五輪が翌年に延期となればこれらの記述は事実と異なってしまいます。もちろん延期されたことは「誰でも知ってる事だから仕方ないんじゃないか」という意見もあるでしょうが、教科書の場合はそうも行かないようです。
教科用図書検定とは、小中高などの教科書が教科用図書検定基準に適合するかどうかを文部科学大臣が検定する制度です。学校教育法では、これらの過程においては「文部科学大臣の検定を経た教科用図書または文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならないとあります。
そしてこの教科用図書基準には、教科書としていろんな条件が定められています。政治や宗教の扱いは公平でなければならないことや特定の営利企業、商品などの宣伝や避難になるおそれがないことなど、偏見や特定の事例を特別に強調することがないよう教育上配慮するよう規定されています。
その中でも正確性という点についても定めがあり、図書の内容に誤りや不正確なところがないことも条件とされています。事実と異なる記載となれば自主的に訂正する必要が出てきます。
こういった現状に教科書を出版する各社の担当者は気をもんでおり、「延期か否かを早く決めてほしい」「延期となれば事実に従って開催の言葉を修正する」と記述内容の変更を余儀なくされるため、印刷が間に合わないと危惧する声があります。
東京五輪は2013年9月に開催地が決定され、日本中が歓喜に湧きました。その後、エンブレムのデザイン酷似問題、開催費用分担問題、夏の暑さ問題と開催に向けていろんな課題があっては解消されやっと開催年にこぎつけたとなったら新型コロナウィルスという最大の問題が発生しました。
延期となれば経済的な問題から各国選手の派遣をどうするのか、会場、施設は確保できるのか、財源はどうするといったあらゆる方面に多大な影響を及ぼすことが取りざたされていますが、ここに来て教科書にまで問題が及ぶという点でオリンピックがいかに世界的に大きなイベントであるかを再認識しました。
ビッグイベントなだけに教科書に記載されている内容、ページ数も多く、教科書改訂をめぐる思わぬ余波が世間を騒がせることになりそうです。1年程度の延期に収まりそうですが、延期はオリンピック史上初となります。
2021年度から中学校で使用される教科書には2020年の東京五輪に関する内容が多くの教科書に記述され、東京五輪が延期となれば教科書を大量訂正しなければいけなくなります。
教科数は9教科33点にも及ぶということですが、関連する教科は多岐にわたり保健体育、国語、数学、地理、技術などいたるところにオリンピックにまつわる話題が記載、採用されています。
特に「2020年開催」という表現は、事実と異なるため教科書検定基準に抵触、教科書の訂正が求められることになりそうです。1年延期になるということで記述も内容も全く異なってきます。
新型コロナウィルスの感染拡大問題は終息する様子も見えないどころか、世界各国で拡大しています。このような状況で1年延期という判断が下され、オリンピック関係者ならずとも教科書出版業界も延期に向けてさまざまな準備、仕切り直しをよぎなくされます。
編集担当者の修正作業も大変でしょうが、経済的な影響も大きくまだまだいろんなところでいろんな問題がはらんでいる可能性もあるかもしれません。一日も早く終息することを願うところです。