野球の打順の考え方として最も重要なのはいかに効率よく多くの得点をあげることができるか、この1点に尽きます。現状のメンバーで一番得点を上げる確率が高い打線を組むことが求められます。
打順のセオリーについては昔から言われて続けてきたものが今でも主流ですが、野球という長い歴史のあるスポーツでは打順についてもいろんな統計結果もあり、この打順の在り方についていろんな説があるのも事実です。
ここでは昔から言われてきた打順のセオリーについて紹介したいと思います。早速見ていきましょう!
当たり前のことですが、初回の攻撃は1番打者から始まります。野球において勝率を高めるために重要なのは先制点を上げることです。先制点を奪われて追う側は、最低でも追いつくために戦術が制約されてしまいます。
もちろん初回に先制したからと言って残りのイニングを逃げ切れるわけではありませんが、初回の攻撃が持つ意味は大きくなります。そのために1番打者がまず果たすことはとにかく出塁してできるだけ先の塁に進塁することです。1番打者として求められる役割は
この3点が昔から重視されてきました。
足が速いというのは、内野安打でも出塁できますし、出塁すれば盗塁や送りバントで先の塁へ進塁しやすくなります。足の速い走者が塁にいることで投手の警戒も強まり打者への集中も書くことになります。
さらに後続の打者がヒットを打てば本塁まで帰ってくる確率も上がります。足が速い打者を1番に据えることで最初の1点をあげやすくなります。
次に選球眼が良いというのは、四球による出塁もしやすくなると同時に先頭打者として相手投手の投球を見極めることで後続の打者に情報を伝えることができます。少しでも多くの球を投げさせることができればそれだけ相手投手の球筋や球種の情報を得られます。
また打率が高いということは出塁の機会が増えます。さらにいきなりヒットを打たれると相手投手や守備陣は警戒します。相手チームの打線は強力じゃないか?自チームの投手の球がタイミング合わせやすいのではないか?と不安な気持ちにもなります。
なお近年では、足の速い選手よりはパンチ力のある打者を置くケースも多いです。先頭打者本塁打やいきなり長打を浴びせて2~3点を奪いに行くという攻撃も可能となります。
さらに1試合で一番多くの打席に立つことから1番に強打者を置くということもありますが、後続の打者がだんだん弱くなるので最強打者を置くというのはややバランスに欠くと思います。
1番打者が初回に出塁するか否かで先制点の確率は異なります。また一番打席に立つ機会が多いことから打率が高い選手が有利と言えます。
初回をはじめ直前の1番打者が出塁する機会が多くなれば2番打者に求められる役割は非常に多くなります。まず1番打者が出塁すれば先の塁へ進めることが優先されます。さらにチャンスを広げるためののバッティングも要求されます。
そのため2番打者に求められる役割は
などがあげられます。
1番打者が出塁した場合、無死や一死の場合はよく送りバントをする攻撃が用いられました。また試合状況やカウント次第ではヒットエンドランを仕掛けるケースもあります。走者がスタートし2番打者はバットに当てることであわよくばチャンスを広げるか最悪でも走者を一つ進塁させます。
さらに送りバントや強攻策をとってもダブルプレーにならない、走者として出塁しても進塁が狙えるという点で1番打者並みの足の速さがあることも重要です。また野球をよく知っているいやらしいバッターとは、状況に応じて流し打ちやセーフティバントなど相手守備陣の隙間を狙った攻撃が仕掛けられることを指します。
バントやヒットエンドランを仕掛ける器用さや走者を進めてチャンスを広げる、あるいは1番打者がアウトに打ち取られても何とか出塁するいやらしさのある打者が座ることで攻撃のバリエーション、得点の機会を増やすことができます。
とにかく1、2番打者でできるだけ出塁しスコアリングポジションに進塁することで次のクリーンナップへつなげる役割が求められます。
3番打者から5番打者まではクリーンナップと言われタイムリーヒットや長打などで打点をあげることが要求されます。その中でも3番打者はクリーンナップで最初に打席を迎えます。
3番打者に求められる役割は
ことがあげられます。1、2番打者が作ったチャンスで打点を上げる、チャンスを広げることで4、5番打者につなげるなどチームで最も打率が高いなど、とにかく3番打者がヒットを打つことで得点力が一気に上がります。
また初回にも必ず打順が回ってくるので、仮に1、2番打者が凡退しても出塁すればまだまだ得点する可能性も残ります。3番打者がタイムリーヒットを打てれば続く4、5番にもチャンスで回せるので2~3点、あるいは大量得点につながるため非常に重要な打順と言えます。
プロ野球やアマチュア野球でも最もセンスのある打者が座る打順で首位打者も3番打者か1番打者が獲るケースが多いのもこのためです。
4番打者がチームで最も信頼されている、いわばチームの顔というのがもはや野球界の常識となっています。それゆえに4番打者というのは単なる4番目の打者ではなく特別な意味を持ちます。4番に求められる役割は、
といったことが重要ではないでしょうか?チームメイトが4番打者まで打順を回せば何とかしてくれる、そのためにチャンスメイクをするという存在が打線を強力なものにします。打力が最もあるのは当然のことながらやはりここ一番での信頼感の最もある選手がふさわしいと言えます。
またホームランはチームに勢いをつける、劣勢を跳ね返すきっかけとなることも多々ありますが、ことさら4番打者がホームランを打てばよりチームに活力をもたらします。
打率も重要ですが、やはりチャンスに強く打点が多い、一発で試合の流れを変えるという長打力は4番打者になくてはならない要素でしょう。
クリーンナップで最後に登場するのが5番打者です。クリーンナップと言われるだけあって塁にいる走者を一掃するという点で5番打者に求められる役割も重要です。
が5番打者に求められます。4番打者がランナーを返した後に最後のとどめを刺す役割もあれば、ランナーを置いて4番打者が凡退した後に5番打者がクリーンナップとして機能することが重要です。
3番打者はアベレージヒッターが求められるのに対して5番打者は4番打者に次いでランナーを返すことが重要です。また4番打者が敬遠されたときに5番打者がそのランナーをいかに返すことができるかで得点力も変わります。
5番打者も強力であれば4番打者を敬遠して無駄なランナーをためることはしたくありません。4番打者と勝負となればそれはそれで得点力も上がります。5番がにらみを利かせてこそ、打線に厚みが生まれます。
クリーンナップの後を打つ6番打者も重要です。クリーンナップがチャンスメイクをした場合にこの6番打者がいかにランナーを返せるかで得点力に差が出ます。しかしクリーンナップほど打力があるわけではありません。6番打者に求められる役割は、
ことです。クリーンナップほど確実性はなくてもチャンスに強い、長打で出塁してチャンスメイクできるような打力があると打線に厚みが増します。
一般的に1番から5番までを上位打線、6番から9番までを下位打線と呼ぶことが一般的ですが、6番打者に強打者がいるチームは得点力が上がります。特に打撃重視のチームならば6番打者が強力であるケースも多いです。
7番打者からは9番打者までは、チームでもあまり打力がない打者が置かれることが多いです。7番打者についてはかつては意外性のある打者を置くという説もありました。上位打線ほどの打力はなくとも意外な場面でヒットや本塁打を打つ選手、言い換えれば打率は高くないがたまに貴重なヒットを打つ選手です。
打力のある選手をできるだけ打席に立たせることを考えれば自ずと下位打線は打力がない選手で構成されることになります。チームでは守備力のある選手が優先されることもあります。
その中でも1番打者へつなぐ役割が8番、9番には求められます。打力はあまり期待できなくても四球やセーフティバント、走力があるといった点で何とかチャンスメイクできれば切れ目のない打線に仕上がるでしょう。下位打線が簡単にアウトを献上しなければ得点力は上がります。
プロ野球では、DH制のないセリーグでは8番キャッチャー、9番ピッチャーという打順がポピュラーですが、これは打力よりもバッテリーとしての投手力、守備力を重視するために仕方ないと言えます。
各打順に求められる役割として4番にはチームの最強打者、最も信頼される打者を置くと説明しましたが、そもそもなぜ4番なの?という疑問もあるのではないでしょうか?
といった点があげられます。しかしもっと単純に1~3番打者が全て出塁した時に満塁で4番に回ってくるからという理由で最強の打者を置くというのが元々あったのではないかと思います。それゆえに4番打者に最強打者を置くようになりその結果4番打者が最も打つため4番最強打者論なるものが定着してきたとも言えます。
逆に最も打力のある打者を少しでも多く打席に立たせるために1番打者に最強打者を置くという説や3番打者こそ最も打力のある打者を置くべきという説もありました。しかしここに来て新たな2番打者最強打者説というのが定着しつつあります。
この理由は
といった考え方があり、メジャーリーグでは主流になりつつあります。もともと初回から送りバントという攻撃スタイルをとらないメジャーらしい考え方ですが、コンピュータによるシミュレーションから導き出されたという裏付けもあるようです。ドジャースの大谷翔平選手もメジャー移籍後は2番を打つケースが多いのも強打者ゆえんでしょう。
そして日本のプロ野球でも今までのような小技のできる2番打者ではなく4番を打つような選手が2番打者に座るケースもちらほら出てきました。代表的なのは巨人の2番打者坂本勇人選手です。筒香選手が2番打者に入ることもありました。
さらに高校野球でもちらほら2番打者に強打者を置くケースも見られます。2番打者に送りバントをさせない戦略をとるチームも増えてきましたが、これまでのタイプと違う打者を2番に据えるチームも増えているように思います。
果たして今後2番打者最強打者説は日本でも定着していくのでしょうか?個人的には非常に面白いと思います。無死1塁で送りバントして後続の打者2人で勝負よりもダブルプレーを恐れずに後続の打者3人でいかに点をとるかというのも戦略としてありではないかと。
野球をするうえでいかに効率よく得点できるかという考え方を重視して打順を組むことが重要です。そのため昔から野球の各打順に求められる役割というのがありました。
といった考え方を紹介しました。
これに対してなぜ4番に最強打者を置くのかという点では
という理由を挙げました。しかしここ数年では2番打者に最強打者を置く2番最強打者説が特にメジャーリーグで主流となっています。
といった理由もあり、日本プロ野球や高校野球でも見かけるようになってきました。
実際に2番打者に強打者が座ることで得点力がどれだけ上がるのか?といった視点で野球を見てみるのも面白いのではないでしょうか?果たして何番打者に最強打者を置くのが正解なのか?興味深く野球を見てみたくなりますね!